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エンジニア組織の中間管理職がAI活用で1年間試行錯誤してみた

morimorihogeです。今年ももう12月ですね、時の流れが速い。

今年一年を振り返るとAI活用が大きく進んだ年でした。詳細は本文にも書きますが、去年までは限定的なツールとしての活用にとどまっていたのが、今年は業務フロー全体や自分の業務の中心にAIを組み込む機会が増えました。
特にCoding Agentの登場&進化は大きなインパクトがあり、今現在でもちょくちょく新しいツールやサービスが登場しています。

本記事では、今年現時点での振り返りとして僕が今年1年間で試行錯誤してきたAI活用の取り組みや感触についてを紹介します。
10人前後の受託開発エンジニアチームの中間管理職の一例として、同じような立場の方の参考になれば幸いです。

コーディング・実装・レビュー

まずはわかりやすい得意分野として、コーディング・実装に関するAI活用です。
※特に断りがなければRailsアプリケーション開発(Ruby、HTML、JavaScript)及びAWSインフラ管理など(Terraform、AWS CLI)を前提としています。

2025年初

年始の時点での活用状況としてはあくまで「支援・調査」に伴う活用が中心でした。

GitHub Copilotによるコード補完

2024年から引き続き活用していたものとして、GitHub Copilotによるコード補完があります。
現在のGitHub Copilotは他にも色々できるようになりましたが、当時の機能としてはエディタ上で途中までコードを書くとその先のコード補完を生成する形で、コードの一部を生成してもらう使い方です。
私が業務で取り扱うようなエンタープライズアプリケーションにおいては、ビジネスロジック自体が複雑でも詳細な実装レベルでは基本的には同じようなベストプラクティスに沿った実装になることが多いため、コード補完である程度のコードを生成してもらえることは生産性向上に寄与しました。

また、テストコードの実装についてはGitHub Copilotの支援は特にありがたいものでした。テストコードはセットアップ部分だったりテストデータ作成部分のコードがどうしてもそれなりの分量になりますが、そういった部分を自動生成してもらえることで、テストコード全体の実装工数を削減できました。

その他の僕の特徴的な使い方としては、ドキュメント執筆におけるGitHub Copilot活用があります。
Markdownの文書を書く際にGitHub Copilotを活用することで、会議しながらの議事録執筆を効率化したり、顧客向けや社内向けのドキュメント作成を効率化したりしました。今書いているこの記事もGitHub Copilotを活用して執筆しています。
純粋にキーのタイプ数が減るのはありがたいですね。

ChatGPTでの質問・相談・調査

その他の活用としてはChatGPTへの質問・相談があります。

ある程度限定された技術的な質問などについては、昨今のWebはSEO汚染が進み過ぎてまともな検索結果が得られにくいため、ChatGPTに直接質問して回答を得ることが多くなりました。
エラーメッセージをベースとした調査なんかについても、以前はGoogle検索して各所のサイトを巡回して情報を集めていましたが、ChatGPTにエラーメッセージを投げて解決策を提案させ、その上でデータソースを確認する形に変わりました。

他にも、限定的な問題解決について、ChatGPTに相談してサンプルコードを作らせ、それを参考に実装を進めるということはそれなりにありました。
とはいえ、一発でほしい回答がもらえないこともそれなりに多く、何度か往復した上で最終的に自分で実装する形になることが多かったです。

2025年序盤の状況

以上のように、2025年初頭の時点ではAI活用はあくまで「支援・調査」レベルにとどまっており、実際の実装は自分でエディタやIDEを使って実装したり、調査についても最終的なコマンド実行や調査は自分で行う形でした。

2025年中盤

2025年中盤くらいからCoding Agentが流行り始めたので使い始めます。

Claude Code(MAXプラン)の登場・活用

最初はAiderRoo Codeなどを試してみてなかなかいいかも?と思っていましたが、やはり衝撃はClaude Codeの登場でした。

Claude Codeはもちろん精度の面でも優れていましたが、明らかにブレークスルーが起きたのは「定額プランで(ほぼ)使い放題」という点でした。
今もそうですが、AIサービスは「ちょっと質問して答えてもらう」「特定の問題を解決させる」くらいの仕事であれば、無料プランや低価格プランで十分です。しかし、ある程度複雑な仕事をさせたり、AI自身に自問自答させながら仕事を進めさせるような場合、従量課金や上限ありの有料プランがほとんどでした。
Claude Codeはそこに「月額固定料金で(ほぼ)使い放題」という選択肢を提供したことで、これまでは「この仕事、AIに任せるとお金かかるから抵抗あるな」と感じていた部分が「むしろ使わないと損なので使い倒そう」という意識に変わりました。

MCPサーバーやCLIでの情報取得方法などを教え込ませたことで、PRのレビューやコード調査などのタスクをClaude Codeにやらせる流れができました。
これまではあくまで自分が主体でコードを動かしたりレビューしていたのが、最初からClaude Codeに「このPRについて調査して、ルールに従ってレビューして」と指示することで、コードレビューの下準備をやらせる形に変わりました。

コードの実装についても、Issueの時点でもう実装方針が決まっているようなもの(あとは実装するだけ状態)についてはClaude Codeに下書きさせて、その上で自分で修正・調整する形で実装を進めるようになりました。

数年・十数年に一度レベルの大きな変化を実感し始める

Claude Codeを1-2か月ほど使い倒してみて「あ、これはよくある継続的な業務改善ではなく、そもそも業務のやり方・エンジニアの仕事の役割自体が変わるレベルの大きな変化が来たな」という実感がありました。
これまでもAI活用は色々ありましたが、あくまで「業務や開発の支援ツール」の範囲を出ることはありませんでした。しかし、Claude Codeの登場により「AIが主体となってコードを書き、エンジニアはそれをレビュー・修正する」という形が現実的に見え始めました。

この辺りからソフトウェアエンジニアの業務自体が大きく変わる可能性を感じ始め、エンジニアリングマネージャーとしてもチームの働き方や業務フローを見直す必要があるなと思い、社内でも情報共有やお気持ちを発信し始めました。

2025年末現在

Coding Agentの活用に慣れ、ブラッシュアップの段階に入っています。

Claude Code主体での開発

ここ数か月、自力でコードを書くことがほぼなくなりました
基本的にコードを実装するときや修正するときにはClaude Codeにプロンプトごしに指示を出し、生成されたコードをレビュー・修正して取り込む形で開発を進めています。

流れとしては以下の感じです。

  • 要件定義をざっと手元で整理(1~20行くらい)して、Claude Codeに要件整理させたレポートを作らせる
  • レポートの内容を確認し、Claude Codeと対話して要件の不明点を潰す
  • 要件が固まったら、Claude Codeに設計書を作成させ・実装させる
    • まとまった機能開発ではSDD環境としてspec-kit(仕様書ベースでAIに実装させるためのツール)を利用
    • 小規模な開発では直接実装させる
  • 実装されたコードをレビューし、動作確認&必要に応じて修正・調整する

この辺りはまだ試行錯誤な部分もありますが、概ね作業としては回るようになってきました。

また、Claude Codeの活用に慣れてきたため、複数プロジェクトの並行開発がしやすくなりました。
人力でやっていたころは、複数プロジェクトを並行して進めるとどうしても頭の切り替えが必要で集中力が途切れがちでしたが、AIエージェント前提の開発だと要件定義やレビューの時以外はあまり頭を使わずに済むため、エージェントが実装や調査をしている最中に複数プロジェクトの並行開発がしやすくなりました。

また、AIの作業内容レビューについても積極的にMermaidによるUML図を描かせることで、ぱっと見で何をやろうとしているのかを把握しやすくなりました。
読みやすい仕様書や設計書をほぼゼロコストで作成できるので、作業するプロジェクトを切り替えたときのキャッチアップが楽になりました。

AI活用前提の業務へ

依然としてCoding Agentを乗りこなすにはプログラミングの知識なりレビューするスキルが必要ですが、少なくともこれまでの仕事の仕方が大きく変わり、特に開発速度面は今後も加速していくなあと感じます。

特にエンタープライズアプリケーションの業務開発では、設計までは顧客からのヒアリングやビジネス要件の整理・調整が必要ですが、その後の実装部分にオリジナリティが必要とされることはほとんどありません。
むしろ、担当者が入れ替わっても問題なく引継ぎできるように標準的なベストプラクティスに沿った実装を行うことが求められるため、そういった定型的作業は今後もどんどん人間の仕事ではなくなっていくなあと感じました。

・・・しかし、そんな世の中でどうやって次のソフトウェアエンジニアを育成していくのか?というのは大きな課題です

プロジェクト管理・顧客窓口

中間管理職・プロジェクトリーダー的な業務をやっていると発生するプロジェクト管理や顧客窓口対応についてもAI活用を試みました。

2025年初め

このころはまだプロジェクト管理や顧客窓口業務としてのAI活用は限定的でした。
どうしても人とやり取りしたり、言語化されていないものを言語化・整理するといった業務が多いため、まだまだそこまで活用できていなかった時期です。

ビジネス調査・情報収集での活用

2025年2月に公開されたChatGPT Deep Researchはかなり便利で、新規顧客のビジネス背景や競合調査など、ある程度ふわっとした情報収集を行う際に役立ちました。
受託開発では様々な業界のお客様とお付き合いすることが多いため、お客様のビジネスに詳しくなる必要があります。これまではそういった部分を自分の普段の趣味を含めた情報収集や経験による知識で補っていましたが、いざ他のチームメンバーに説明するとなると実際の専門家でもないので限界がありました。
そんな際にDeep Researchを活用することで、自分の中で「8割くらいは合ってると思ってるんだけど、本当にそうだったのか根拠を示した補足が欲しい」といった部分を補完でき、顧客やチームメンバーに説明する際の信頼性を高めることができました。

相手に伝わりやすい説明資料を作る際にChatGPTにドラフトを作成させて、それを自分で修正・調整する形で資料作成を効率化することもありました。
とはいえ、この時期の生成AIはどうしてもAI臭い文章になりがちだったり、技術的な間違いを平気で混ぜ込んでくることがあったため、最終的なチェックは自分でしっかり行う必要がありました(これは今でもそうですが、もっとひどかった)。

2025年中盤~現在

Claude Codeの登場以降、MCPサーバー経由やAPI経由でプロジェクト管理ツールやチャットツールの情報が簡単に活用できるようになったため、プロジェクト管理や顧客窓口業務でもAI活用が進みました。

プロジェクトの状況整理

GitHub / GitLab / Backlog / Slackの情報をClaude Codeに収集させてプロジェクトの進捗や課題を整理させることで、定期的なプロジェクト状況確認をAIにやらせることができるようになりました。

これまではプロジェクトごとの管理ツールを都度都度巡回して情報収集する必要があったため、7-8プロジェクトくらいあるとブラウザウィンドウが溢れてうんざりしていましたが、現在では「XXXプロジェクトの直近のタスク状況を整理してまとめて」と指示するだけで状況が分かるようになりました。

議論の整理

他にも、Slackなどでやたら長いスレッドのやり取りが発生している場合にも「このスレッドの内容を確認して問題点を整理してまとめて」で時系列を脳内で整理して読まずによくなり、精神的な負荷が下がりました。
チャットツールはその場で議論するのには適しているのですが、最終的に後から読んでまとめるのには向いておらず、そういった部分をAIに補完してもらうことで効率化できました。

今後の方向性

まだできていませんが、純粋な進行管理役としてのPM(Project Manager)業務は大部分をAIに任せられるのではないかと考えています。
PM業務でやっていることはタスクの進捗確認やリマインド、スケジュールの組み直しなどが中心であり、ある程度ルール化できるためです。

この業界、お客様によってはコストがかかるのでPMは置きたくないというケースがありますが、経験上そういったプロジェクトの多くは炎上・失敗しがちです。一方で、そもそもPMは顧客交渉などの部分を除いた通常業務については適正があればそれほど高度なスキルが必要なわけではなく、ルールに従ってタスク管理や進捗管理を行うことができれば十分に機能します。
そのため、今後はPM業務の大部分をAIに任せつつ、顧客折衝や重要な意思決定などの部分だけ人間が担当する形でプロジェクト管理を行うようになるかなあと思っています。

会議・ドキュメンテーション

リーダーやマネージャー職になると、会議やドキュメンテーション業務が増えます。
僕も1週間の営業時間の半分以上くらいは何らかの打合せが入っている状態ですが、そういった会議業務やドキュメンテーション業務についてもAI活用を進めています。

2025年前半

2025年前半はまだ会議・ドキュメンテーション業務におけるAI活用は限定的でした。
会議の文字起こし機能なんかが徐々に普及し始めた時期ですが、まだまだ精度が低く、実用的に使えるレベルではありませんでした。

ドキュメンテーション面でChatGPTなどにテンプレートを作成させたり、殴り書きしたメモを整理させたりすることはありましたが、それでも会議の一次情報としては人力で記録する必要がありました。

2025年中盤~現在

AI活用のノウハウの共有が進んだこと、そもそもサービス側の品質が上がったことで、活用の幅が広がりました。

会議の文字起こし・議事録作成

会議の文字起こしについては現在ではかなり実用的なレベルになってきました。
僕の場合は以下のような方針で文字起こしを作成しています。

  • ZoomやGoogle Meetなど、文字起こし機能があってそれを使える場合(会議のowner)はそれを使う
  • 会議サービスの文字起こしが使えない場合には、OBSで会議内容を録画し、録画データをGeminiに食わせて文字起こしを作成する
    • 具体的にはffmpegで20分程度の動画に分割・圧縮し「この動画ファイルの内容を文字起こしして、VTTフォーマットにして出力してください。可能な限り画面情報から誰が話しているかの情報も抽出して付与してください」 といったプロンプトで処理させています
    • 実際には作業はclaude commandsおよびsubagents化しているため、slash command一発で処理できるようにしています

これで、概ね誰が何を話していたのかという情報が含まれた文字起こしデータが得られます。
この文字起こしデータをClaude Codeに渡して議事録を作成させています。

Meetなど、会議サービスに議事録作成機能があるものもありますが、Claude Codeに議事録を作成させる方がGitHubなどのプロジェクト管理ツールの情報も参照し、何なら議事録内に話題にしているタスクへのリンクまで貼ってくれるのでこちらの方が精度が良いですね。

これにより、原則すべての会議で文字起こし・議事録作成を行えるようになりました。ちょっとした打合せでも議事録が残るため、内容を共有しやすくなり、会議に参加できなかったメンバーも後から内容を把握しやすくなりました。

一方で、文字起こしや議事録の精度についてはまだまだの部分もあり、顧客向けやきちんとした情報として共有するような場合には、この手順で出した議事録をベースに自分で修正・調整する必要があります。
現時点ではまだ存在しないメンバーが出てきたり、会議で合意していないことを合意したとして書かれることがあるため、完全自動で共有するようなことはしていません。自分の手元に履歴として保存し、必要に応じて修正してから共有する形ですね。

ドキュメンテーション

ドキュメンテーションについてもAI活用によって気軽に分かりやすく整理したドキュメントを作れるようになりました。

マネージャー職になると社内ルールやアナウンス、チームの方針などある程度多くの人に過不足ない情報を伝える機会が増えますが、そういったドキュメントの下書きや内容チェックをClaude Codeにやらせることで、ドキュメント作成の負荷が下がりました。
ある程度以上品質を高めたいと思ったときにはClaude CodeからGeminiをAPI呼び出しさせ、OpusとGeminiに相互で多段階レビューさせてみるということもやっています。
また、自力で書くとめんどくさいMarkdownの表やUML図などもClaude Codeに描かせることで、ドキュメントの見栄えを高めることができるようになりました。

品質の高いドキュメントを残していくことは、将来AIに読み込ませてナレッジベース化する際にも重要になるため、今後もドキュメント作成の効率化は進めていきたいと思っています。

ピープルマネジメント・中間管理職業務

いわゆる部下の管理や育成、1on1などのピープルマネジメント業務だったり、管理職業務についてもAI活用を試みました。
ここでのチーム管理は10人前後のエンジニアチームを想定しており、自分の直下に各メンバーが直接所属する形態を想定しています。
※数十人規模の階層型エンジニア組織のマネジメントとかではないです

2025年前半

この時点ではまだほとんどAIによる活用はできていませんでした。
労務面での相談を受けた際などに、ChatGPTに相談して事例や制度などのアドバイスをもらうことはありましたが、これはこれまでもWeb検索でやっていたような内容でもあり、特に大きな変化はありませんでした。

2025年中盤~現在

Claude Code活用に従い、定型化できるような業務はある程度AIに任せるようになりました。

様々な雑務類(チェック・承認業務)

月次でチームメンバーの日報や勤怠をチェックする業務については、Claude Codeにデータ収集のスクリプトを書かせたうえでレポートさせるようにしました。勤怠データから異常パターン(未登録・遅刻傾向など)を検出させ、日付×メンバーのマトリクス形式で可視化することで、人力では見落としがちな傾向も把握できるようになりました。社内での経費申請の承認漏れなんかもたまにチェックさせています。

月次の1on1などである程度込み入った相談があった場合などには、後から構造化された議事録やまとめを作って記録しておくようになりました。メンバーが増えると個別の事情については整理しておかないと見落としてしまう危険もあるので、メンバーとのやり取りを後から追いかけられるように記録するのは大事だと思っています。

契約書系雑務として、調整ベースでやり取りしていた内容と実際に紙や電子契約で送られてきた内容が完全一致しているのかのチェックなんかもAIにやらせるようになりました(以前は印刷して透かしチェックとかしていた)。

その他、こまごまとした業務のうち定型化されている・頻度がある程度あるものについては、積極的にAIにやり方を覚えさせて自動化・効率化しています。

チームメンバー評価

チームメンバーの評価についても、ある程度AIに支援させるようになりました。

弊社では半期ごとに評価面談を実施しているのですが、その際に直近半年間の各メンバーの業務内容や成果をClaude Codeに収集・整理させ、ある程度何をしていたのかを詳しく把握した上で評価面談に臨めるようになりました。
これまでは日報システムの概算レベルや本人に提出してもらう面談シートの内容をベースにしていたのですが、参考情報としてClaude Codeにもデータ収集させることで、より正確に各メンバーの業務内容を把握できるようになりました。

自己申告ベースだと、本人からの申告がないとせっかくやった仕事が評価されなくなってしまう可能性もありますが、幸いエンジニアはSlackなりGitHubなりに日々の仕事の痕跡が残るため、情報収集させる部分はAI向きな仕事かなと思います。

また、メンバーの過去の成長履歴などをぱっと分析させて眺めたりといったこともできるため、メンバー育成やマネジメント視点で気軽に相談できる相談役としても活用しています。

なお、実際の評価決めといった部分は流石にAIにはやらせておらず、人間である自分が最終的に判断しています。この辺をAI化するのは新規の組織やチームであればまだしも、既存の組織でやるのはまだまだ難しいでしょう。

AI活用をやめたこと、任せられないこと

色々AI活用を進めてきましたが、一方でAIに任せられないことや、AI活用をやめたこともあります。

SlackでのBOT投稿(やらせてみたけど結局やめた)

Claude Code活用を進める中で、Slack BOTを作成し、作成したPRレビューレポートや週刊レポートなどを積極的にSlackに投稿させるようにしてみたこともありました。
しかし、実際にはあまりいい感じにはならず、結局自分で投稿する形に戻しました。

理由としては以下のようなものがあります。

  • 完全AI任せだと内容が絶妙に不正確
    • 議事録の節でも書いたように合意していない合意事項が混ざったり、存在しないリスクを指摘したりといったことがある
    • 「間違ってるのにぱっと見もっともらしい」ことにより、かえって混乱を招くことがあるため、それならないほうがマシかなと考えるようになった
  • 正確な情報伝達をさせようとすると、人間がチェックする手間が増える
    • 「投稿前には必ずレビューさせること」といったルールを設けてやってみたこともあるが、人間がチェックするなら最初から人間が投稿したほうが早い(下書きを書かせることはある)
    • どこまで頑張ってプロンプトで指示しても無視することが一定確率であるため、それを気にする脳内コストが発生する

GitHub / GitLabコメント(やらせてみたけど結局やめた)

PRレビューなどを行う際にはローカル環境でレビューレポートを作成し、その中でClaude Codeと対話してレビューを進めていますが、そのレビュー結果の内容を直接GitHub / GitLabのPRコメントに投稿させられたら便利だな、と思ったことがありました。
しかし、これも実際にやってみると以下のような問題がありました。

  • 内容が冗長になりがち
    • 数行で良い内容をいちいち冗長に説明し出すため、reviewee側の負荷が上がる
    • プロンプトで短くまとめるように指示しても、今度は説明不足になることがある(意図が伝わらない内容になったりする)
  • 暴走しがち
    • PRコメントに直接投稿させると、たまに暴走して意味不明なコメント(こんなん書かなくていいよ的なこと)を大量に投稿し始めることがある
    • これも結局人間がチェックする必要があり、チェックするなら最初から人間がコメントしたほうが早い

結果、ある程度下書きを提案させることはありますが、最終的な投稿は人間が行う形に戻しました。

カレンダー管理

Claude CodeをGoogleカレンダーと連携させているのですが、基本的に読み込み専用で、予定の自動登録などは行っていません。
他でもあるように、AIはたまによくわからん暴走をすることがあるため、勝手に予定を登録されたり変更されたりするのは怖い、というのがあります。

一方で読み込みについては積極的に活用しており、議事録作成の節で書いた会議文字起こしエージェントなどでは録画・文字起こしの作成時刻とカレンダーを突合させて、なんの会議かを特定するためカレンダー情報を活用しています。

今のところはAIが暴走しても迷惑の範囲が僕の範囲にとどまるような使い方になるようにしています。

稼働実績・請求書管理(データ収集のみ)

プロジェクトによっては稼働実績を人日単位等でまとめて報告する必要があるのですが、こういった稼働実績についてはデータ収集までをClaude Codeにやらせ、集計については手動で行っています。
理由としては、生成AIは数値計算が苦手であり、簡単な足し算であってもよく間違った数値を出力することがあるためです。

※この辺りの背景については「生成AI 算数 苦手」などで検索してみてください。色々記事が出てきます。

この辺りを自動化するのであればClaude Codeにはデータ収集してGoogle Sheetsなどに書き出させる部分までをやらせ、その後の集計はExcelやGoogle Sheetsの関数に任せる形が良いかなと思っています。

最終ディレクション部分全般

2025年末時点では、まだ最終的な意思決定や重要なディレクション部分についてはAIに完全に任せることはできていません。
体感ですが、ある程度業務をAIに色々提案させてみた際のやり取りでは、以下のような精度感があります。

  • 8割くらいのケース
    • 60-80点くらいの内容が返ってくるが、細かい部分に誤りがあったり、おかしな点がある
    • 対話しながら直せば90点には持っていける
  • 1-2割くらいのケース
    • 明らかにおかしな内容が返ってくる
    • 最初からやり直しが必要
  • たまに
    • ほぼ修正不要な完璧な内容が返ってくる
    • 当該業務に特化しない一般的な調査などを依頼したときに発生しやすい

精度が上がらない部分は大体当該業務だったり意思決定に特化した知識や経験が必要な部分であり、これらは文書化されていないナレッジや暗黙知が多く含まれるため、現時点ではまだAIに任せるのは難しいと感じています。

まとめ

そんなわけで、2025年1年間で試行錯誤してきたAI活用の取り組みについて紹介しました。
6月くらいからClaude Codeを本格活用し始めてからは特に大きく働き方が変わり、来年以降はさらにこの流れは加速していくのではないかと感じています。

エンジニア組織の中間管理職という視点から見ると、AI活用は以下のような観点で進めていくのが良いかなと思います。

  • 「拡張された自分」として使う
    • 自分のやっている仕事を言語化して依頼することで、自分の代わりとして仕事を進めてもらうことができます。
    • 一方で「自分ができない(進め方をイメージできない)仕事」についてはやり直しや暴走が発生しやすいため、まずは自分ができる仕事の中で定型化できる部分をAIに任せていくのが良いですね。
  • 「簡単にやり直しさせられる相手」として使う
    • 人間相手だと、調査させた内容を図付きのそれなりに厚みのあるレポートにまとめさせ、その内容を斜め読みして「ん-、いまいち。全部書き直して」といったことをやるとパワハラになりかねませんが、AI相手であれば可能です。
    • AIに人権はないので、一生懸命作らせたレポートに対して気持ちを気にせず無慈悲なフィードバックをしながらブラッシュアップということができるのはかなり便利です。
    • また、工数を気にせず試しに色々やらせてみるといったことも投機的にできるため、まずは試しにやらせてみるといったケースには向いていますね。
  • 中間管理職ほどAI活用の余地がある
    • 普段時間に追われる中間管理職ほど、AI活用による効率化の恩恵を受けやすいと感じます。
    • 例えば、情報整理・要約を積極的にAIにやらせることで、プロジェクトごとの頭の切り替えがスムーズにできたり、見落としの可能性を減らせたりします。
    • 定常業務の中で「そこまで大きな手間ではないが、忙しい時期にくると煩わしい作業」といったものも、何度か試行錯誤してAIに任せられるようにすれば、精神的な負荷を大きく下げることができます。

普段から「時間がない」と感じている人は、まずは自分のやっている仕事の中で定型化できる部分を洗い出し、AIに任せられるように試行錯誤してみると良いかなと思います。最初に慣れるまでの手間はかかりますが一度仕組みを作ってしまえばあとは楽になるので、長期的には大きなリターンが得られると思います。ではでは


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