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リフォームトラブルをAIに助けてもらった話

本当はAIの技術的な記事を書いてみたかったのですが、社内の詳しい方がすでに参考になる記事をたくさん書いているので、興味ある方は他のTechRachoの記事をぜひ読んでみてください。

ここでは、最近フルリフォーム工事のトラブルでAIを利用するという珍しい機会があったので、その体験を少し書いていければと思います。

リフォーム工事にはトラブルがつきものと耳にはしていたのですが、なんだかんだ他人事だと思っていたので、まさか自分に降りかかるとは思ってもみませんでした。

始まり

そもそもの始まりは、たまたま中古マンションを安く買えたのですが、あまりに古く、住むにはフルリフォーム工事が必要でした。
時間的な制約があったため、不動産屋から紹介された小さなリフォーム会社に依頼したのですが、その会社の社長兼大工さんは、いわゆる「全て俺に任せとけ。いいものを作ってやるからよ」という昭和気質の方でした。
最初はご機嫌だったのですが、徐々にオーダーと違う箇所が出始め、指摘すると口を出すなと怒られ、だんだんと打ち合わせができない状況になっていきます...

どうしたら良い??リフォームトラブル

うーむどうしたものか。このままでは想像と違う家になってしまう...なんとかしたくてもどんどんと工事は進んでいくし。

悩んだ末、そうだこんな時は消費者センターだ、と思いつき、まずは消費者センターに相談してみることにしました。
消費者センターの利用は初めてだったので、これである程度解決につながると勝手にイメージして、地元の消費者センターに電話で予約を取ってから向かったのですが、残念ながら今回の相談は消費者センターで解決できる内容とは違ったようでした。
持参した資料もほぼ読まれることはなく、そこでは「住まいるダイヤル」という電話相談窓口のパンフレットを渡され、簡単な説明を受けて終わりました。


それで今度は「住まいるダイヤル」に電話をしてみることにします。
住まいるダイヤル」は住宅関係の問題に対して相談できる無料の電話窓口で、建築士の方が相談に乗ってくれるとのこと。

これはかなり期待できそう。ということでさっそく電話をかけて状況を説明すると、建築士の方が丁寧に話を聞いてくださり、色々と役立つアドバイスをもらうことができました。
30分という時間制限がありましたが、進展があった時などに何度か電話して都度アドバイスをもらうことができました。

その窓口でもらった最終的なアドバイスは

  • 相手との話し合いを期待するのは現実的ではない
  • 工事が要望と違う箇所については、項目ごとに追完請求書を出すと良い。相手は回答する責任がある(細かく分けると、余計な工事に対しては損害賠償請求、要望と違う部分については追完請求らしい)
  • 状況によっては弁護士に相談する

というものでした。
追完請求書とは、いわゆる「契約した内容とは違うので直してください」という書類らしく、なるほどこの方法ならこちらの主張も相手にしっかり伝わりそうです。
弁護士に相談は...うーん...そこまでおおごとにしたくないし、お金もかかりそう...

ということで、とりあえずまずは追完請求書を送ってみることにしました。


ただ問題は、追完請求書というものを作ったことも、それこそ聞いたことも見たこともありません。
書き方やフォーマットは自由で、行政書士さんなどに依頼してもよいし自分で作っても問題ない、とのことでしたが、いかんせん見当もつきません。
わかりました、やってみます!と電話を切ってネットで調べてみたのですが、これといった書式も見つかりません。

これは困った...

そうだ、こんな時こそAIだ

ということで、AIにこれまで一度も見たことのない追完請求書を作ってもらうことにします。
とりあえず、普段使っているブラウザがChromeということもあり、その当時のGemini 2.0 Flash(要所で Pro モデルも併用)を利用することにしました。

まずは、現場に行き、こちらの依頼と違う項目や、「この出来はどうなの?」という箇所をリストアップします。
そして、追完請求したい項目とそれに関連した情報を含めてGeminiに伝えます。
そして、上記の情報から追完請求書を作ってとお願いすると

.
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.

1. 収納棚の追完請求(仕様相違)
契約不適合の内容: パントリーの棚が、板が固定されているタイプで施工されており、こちらが要望した「高さを自由に変えられる可動棚」に適合していません。
追完内容: 高さを変えられる可動棚に作り直して修補してください。

おー!すごい。
追完請求(と思しき)文章が出来上がりました。これが理想のフォーマットなのか全くわかりません(新規で作成依頼するたびにフォーマットが微妙に変わるし)。
そこは建築士の方の「フォーマットは自由」という言葉を信じることにします。

その後出力された文章を項目ごとに分解し、項目ごとに必要な情報を加えたり修正したりして、再作成を繰り返して、希望に近い文章を作っていきます。
相手に合うように、表現を強めにしたり弱めにしたりを調整してもらいます(強くすると「民法第何条によると」などと民法で殴りだします)。
追完請求したい項目がさらに増えた場合は、統一感を出すために他の項目の表現やフォーマットに合わせてもらいます。
この書面が証拠として残っていくので、誤解や誤った情報が入らないよう時間をかけて再作成を繰り返します。
さらに追完請求書として正当な主張かどうか、根拠の弱い部分がないか、補強できそうかを確認してもらいます。


最終的に今回の1番目の項目はこのような文章に落ち着きました。

1. パントリー収納棚の追完請求(仕様相違)
契約不適合の内容: 現在パントリーに設置されている棚は造り付けの固定式であり、xx年xx月xx日の打ち合わせにて要望し、打ち合わせメモにも記載のある「棚柱(ダボレール)を使用した可動式棚」に適合しておりません。
追完内容: 事前の合意通り、収納物の高さに合わせて調整可能な可動棚への作り直しによる修補を求めます。

こうして出来上がった書類を、

施工内容に関して契約内容との相違が確認されましたので、修正を求める箇所を「追完請求書」として添付ファイルにまとめました。
内容をご確認いただき、恐れ入りますがxxxx年xx月xx日までにご回答をお願いいたします。

というメールに添付して相手に送信しました(本当は内容証明で送るようにとアドバイスされたのですが、戦う気まんまんと勘違いされては困ると思い、今回はメールで送りました)。

ここまでくればあとは相手の回答を待つだけ。

こうしてなんとか自分で追完請求書を作成し、自分の要望を相手に伝えることができました。

結論

今回AIをこうした形で使うことになるとは全く想定外でしたが、ほんとここ最近のAIの進歩がなければ、専門家に依頼せず自分だけでこのような書類は作れなかったと思います。

回答によってはこちらの主張が通らない部分もあるかもしれません。それでもやっと相手と話し合いを始めることができます。

AIを上手に活用して、リフォームトラブルをなんとか乗り越えることができそうです。

お読みいただきありがとうございました。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

となるはずでしたが、現実はそう甘くなかった...

実際は回答期限を超えても相手から何の返事も来ず、何度か催促したところ最終的にきた回答は

一つ一つ回答しても、お客様が納得されないため、回答は致しません。

と、まさかの一切の回答を拒否され、泥沼になるのはまた別の話。

最後に

結局、弁護士に相談することになりました(ちなみに、「住まいるダイヤル」経由で、1回だけ対面の無料弁護士+建築士相談を依頼できます)。
その際、作成した追完請求書を弁護士の先生に見せたところ、「AIが作ったと言われなければ気づきませんでした。弁護士が作ったものかと思いました。」とおっしゃっていました。

ということで、結論としては

AIを使って作った追完請求書はある程度信頼がおけそうです、なのか、現実はそんなに甘くない、なのか書いていてわからなくなりましたが、とりあえず

リフォーム業者は慎重に慎重に慎重に選びましょう!

では改めて、お読みいただきありがとうございました。

(※本記事は筆者の体験談であり、AIによる法的文書の完全性や法的効力を保証するものではありません。法的な判断が必要な場合は専門家にご相談ください)


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