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(3/3) 公募増資・売出(PO)における繋ぎ売りの戦略

株式投資の中でも、公募増資・売出(PO)は個人投資家にとって魅力的な機会を提供します。しかし、その中で「繋ぎ売り」と呼ばれる戦略を活用することで、リスクを低減しながら利益を最大化する方法があります。本記事では、POと繋ぎ売りの仕組み、具体的な方法、注意点について解説します。また、「安定操作」や「安定操作期間」にも触れ、リスク管理の観点を補足します。

公募増資・売出(PO)とは?

  • 公募増資(Public Offering): 企業が新株を発行し、一般投資家や機関投資家に向けて売り出すことで資金を調達する仕組みです。
  • 売出(Secondary Offering): 既存株主が保有する株式を市場で売却する形式で、企業の資金調達には直接関係しません。

どちらも投資家に割引価格で株式が提供されるため、利益を得るチャンスがあります。

繋ぎ売りとは?

繋ぎ売り(ヘッジ売り)とは、POで購入予定の株式と同銘柄を事前に市場で空売りすることで、株価変動リスクを抑える投資手法です。PO価格決定後に市場価格が下落した場合でも、空売りによる利益で損失を補うことができます。

繋ぎ売りの流れ

  1. POの申し込み 公募増資または売出に応募します。
  2. 空売りの実施 同銘柄を現在の市場価格で空売りします。
  3. PO株式の取得 割引価格で株式を取得します。
  4. 決済 PO株式で空売りを返済(買い戻し)します。

安定操作と安定操作期間とは?

安定操作とは、POや売出の際に株価が大きく下落するのを防ぐため、証券会社(主幹事証券)が市場で買い支えを行う行為を指します。これにより市場の安定性が保たれ、投資家の不安を軽減することを目的としています。

安定操作期間

  • 期間の定義:POや売出が行われた後、一定期間にわたり実施されます。
  • 主な役割:市場での需給バランスを整え、株価の急激な変動を防ぎます。

安定操作は合法的な手段として金融商品取引法に基づいて行われますが、期間が終了すると株価が変動しやすくなります。

繋ぎ売りを行うメリット

  1. 価格変動リスクの軽減 市場価格がPO価格を下回った場合でも、空売りによる利益でリスクを相殺できます。
  2. 安定した利益確保 割引価格と市場価格の差から、安定した収益を狙えます。
  3. 戦略的な資金管理 繋ぎ売りにより、資金効率を高めつつリスクヘッジが可能です。

繋ぎ売りの注意点

  1. 空売り規制: 一部の銘柄では空売りが規制されている場合があります。事前に証券会社の取引ルールを確認しましょう。
  2. 信用取引のリスク: 空売りは信用取引を利用するため、必要な保証金や金利が発生します。
  3. 市場価格の上昇: PO価格が市場価格よりも高くなった場合、繋ぎ売りが損失を招く可能性があります。
  4. 資金拘束: PO申し込みと空売りの両方に資金が必要なため、資金計画を慎重に行う必要があります。
  5. 安定操作終了後の株価変動: 安定操作期間終了後、需給バランスが変化し株価が急変する可能性があります。

繋ぎ売りの具体例

例: 銘柄A

  • 市場価格: 1,000円
  • PO価格: 950円
  • 空売り株数: 100株
  1. PO申し込み後に100株を1,000円で空売り。
  2. PO価格950円で株式を取得。
  3. 空売りポジションを取得した株式で返済。
    1. 利益: (1,000円 - 950円) × 100株 = 5,000円

市場価格が下落しても、繋ぎ売りによりリスクが抑えられます。

繋ぎ売りで押さえるべき重要項目

1. 現物売却手数料

POで手に入れた現物株を売却する際には証券会社に手数料を支払う必要があります。このコストは取引回数や売却金額に影響を与えるため、事前に手数料体系を確認しましょう。POを多く配分してくれる大手証券会社の中にも、一部の証券会社では、いくつかの条件を満たした場合に手数料が安くなる場合、交渉すれば手数料が安くなる場合があります。

2. 空売り手数料

POで繋ぎ売りする場合、ヘッジのために空売りをすることになります。空売りを行う際には、証券会社が設定する空売り手数料が発生します。特に取引金額が大きい場合、この手数料が利益に与える影響は無視できません。各証券会社の手数料を比較し、コストパフォーマンスの良い取引先を選ぶことが重要です。手数料無料の証券会社を利用するとよいでしょう。

3. 信用返済買手数料

ヘッジのために空売りポジションを解消するための信用返済買にも手数料が発生します。売買を繰り返す戦略を採用する場合、この費用を軽視すると利益が大幅に削られる可能性があります。基本的に手数料無料の証券会社を利用すると良いでしょう。

配当や逆日歩のリスク管理

4. 配当

POで購入する株価には配当金は含まれません。配当前に購入しても手元に届くのは配当後です。購入金額も、価格決定日の終値から配当金額を差し引いた後にディスカウント率を掛け算したものになっていますのでご注意ください。

またPO対象銘柄が配当を同時期に実施する場合、配当権利落ち日を跨ぐと配当金相当額の負担が発生することがあります。前項に対して、配当日を迎える前に空売りしている株の株価は配当分の金額を含んでいます。売った値段と勝った値段を単純に比較して利益額を割り出すのではなく、配当分の金額も利益から引いてお考えください。

5. 逆日歩

逆日歩自体の解説は長くなるので、詳しく知りたい方は検索してもらえたらと思いますが、超大雑把にいうと空売りする株式は代わりに誰かが貸してくれているものなので、空売りが多すぎると不足しちゃって空売りの手数料が増える仕組みです。空売りしたその取引だけでなく、空売りして返済買いするまで毎日費用がかかります。

貸株による空売りを行う場合、需給バランスに応じて逆日歩が発生する可能性があります。特に注意喚起銘柄や人気銘柄では逆日歩が高騰しやすいため、事前に信用倍率や貸借状況を確認してリスクを回避する必要があります。時価総額が大きい企業、株主に貸してくれるところが多い企業などは比較的リスクが少ないです。

銘柄の種類に注意

6. 貸借銘柄と信用銘柄

PO対象銘柄が貸借銘柄である場合、空売りが比較的容易ですが、信用銘柄の場合は空売りが制限されることがあります。また、信用銘柄の場合、制度信用取引と一般信用取引の選択肢を理解することが重要です。

7. 注意喚起銘柄

注意喚起銘柄に指定されると、取引規制や信用取引の条件が厳しくなる可能性があります。PO実施中に注意喚起指定を受けた場合、思わぬコスト増や取引の制約が生じるため、最新の情報を継続的にチェックしましょう。

効率的な繋ぎ売りのためのポイント

  1. 証券会社の選択: 手数料体系や逆日歩の条件を比較して最適な証券会社を選ぶ。
  2. タイミングの見極め: 配当権利落ち日や逆日歩発生日を意識して取引を計画する。
  3. リスク管理: 貸借銘柄の需給バランスや注意喚起銘柄の動向を確認してリスクを最小限に抑える。

まとめ

公募増資・売出(PO)は割引価格で株式を取得できる魅力的な投資機会ですが、価格変動リスクを伴います。繋ぎ売りを活用することでリスクを抑えつつ、安定した利益を狙うことが可能です。また、安定操作やその期間について理解することで、さらに効果的なリスク管理が期待できます。ただし、空売り規制や信用取引のリスクに注意し、慎重に判断する必要があります。

目次

(1/3) 公募増資・売出(PO)とは?

(2/3) 公募増資・売出(PO)株の買い方

(3/3) 公募増資・売出(PO)における繋ぎ売りの戦略

最近の公募増資・売出(PO)一覧


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