初回インタビューでは、新鋭マンガ家である横田卓馬さんに登場して頂きました。
横田卓馬さんは、第29回JUMPトレジャー新人マンガ賞で「戦下に咲く」で佳作を受賞し、現在月刊ヤングマガジンで連載中の「戦闘破壊学園ダンゲロス」が売り出し中の若手マンガ家さんです。
そんな横田卓馬さんにインタビューに応えて頂きました。そのインタビューも、始めは緊張されているところも見られましたが、自分のマンガを投稿したきっかけや、 栄養失調になるまで自分を追い込んだエピソードをお聞きして、横田卓馬さんのマンガへの情熱がひしひしと伝わってきました。そんな横田卓馬さんのこれまでのマンガ人生を振り返るインタビューです。
植野準太 それではまず誕生日と血液型からお伺いしてもよろしいでしょうか。
横田卓馬 誕生日は1986年の4月17日で血液型はABです。
植野準太 ご出身は?
横田卓馬 静岡の浜松市です。
植野準太 いつまで浜松市にいらっしゃったんですか?
横田卓馬 高校三年生、18歳までです。
植野準太 その後東京に出て来られたんですか?
横田卓馬 いえ、そこから大学に行く為に神奈川のほうに。
植野準太 その時はもうマンガ家になろうと思っていらっしゃったんですか?
横田卓馬 マンガ家になりたいというのは小学校から思っていたので、
別になりたいと思って 来たわけではなくて、もう既に思いながら来ていました。
植野準太 大学の専攻はその思いに関連したものですか?
横田卓馬 東京工芸大学というところで、アニメーション学科に在籍していました。
最近はまっていること
植野準太 最近はまっていることはありますか?
横田卓馬 マスクコレクション。仮面ライダーの顔だけのフィギュアがあるんですけど、
それを外に出るついでに買っています。
植野準太 今日も買ったんですか?
横田卓馬 はい。
植野準太 何種類ぐらいあるんですか?
横田卓馬 もうたくさん出ていて、何種類あるかはちょっとわからないです。
買った物は机の上に並べて、疲れた時に眺めています。
植野準太 仮面ライダーがお好きなんですか?
横田卓馬 好きですね。
植野準太 仮面ライダーの中でも好きなシリーズはあるんですか?
横田卓馬 仮面ライダー響鬼ですね。細川茂樹さんが主役を演じていました。
マンガ家になりたいと思ったきっかけ
植野準太 マンガ家になりたいと思ったきっかけをお聞かせ願えますか?
横田卓馬 うちの親が看板の絵を描く仕事をしていて、その影響かはわかりませんが、
物心ついたころから僕もずっと絵を描いていました。
植野準太 そうなんですか。教室でよく授業中、
絵をたくさん描いてるすごいうまい人っていたじゃないですか。
横田卓馬 それだ!そういう系の人でした。
画材のこだわりについて
植野準太 使用されている画材でこだわりのものとかはありますか?
横田卓馬 ちょっと忘れちゃったんですけど、ペン軸です。
普通のペン軸だと付け替えてかりかり描くんですけど、インクをティッシュで拭くときに、
強く拭きすぎるとペン先が取れちゃうんですよ。僕が使ってるやつは、くるくる回して閉じるやつなので、
がちっと固定されるからティッシュでいくら拭いてもとれません。
植野準太 小さい頃から好きだったマンガや、今でも見返すようなマンガはございますか?
お仕事柄今もたくさん読んでいらっしゃっるとは思いますが、お気に入りのマンガとかがあれば是非お聞かせください。
横田卓馬 小さい頃から読んでいたのはドラゴンボールとかですが、
今すごく好きかと言われると...バトルものだけでなく、好きなマンガのジャンルは、今も増え続けています。
植野準太 何かこうやっぱり変わるものなんですね。
それでは今、注目しているマンガとかはございますか?
横田卓馬 表向きに注目しているマンガはジョジョの奇妙な冒険なんですけど、
裏向きのマンガは男爵校長という4コママンガです。
植野準太 裏向きとはどういうことですか?少し大人向けということでしょうか?
横田卓馬 いや、違います。隠れた名作という意味です。
植野準太 そうなんですね。ちょっと言うのが恥ずかしいけどってわけでは
なかったんですね。
尊敬されているマンガ家さんについて
植野準太 他のマンガ家の方で好き、あるいは尊敬されている方はいらっしゃいますか?
横田卓馬 週刊連載をしているマンガ家さん全員です。
植野準太 それは連載始めてから思ったのですか?
横田卓馬 いえ、前から思ってはいましたが、
アシスタントを始めてから更にその気持ちが強くなって、
月刊連載を始めてからもっと尊敬するようになりました。
植野準太 アシスタントはどの作品の現場に行かれたのですか?
横田卓馬 【ぬらりひょんの孫】というマンガのアシスタントをしておりました。
植野準太 どれぐらいの期間、アシスタントをされていたのですか?
横田卓馬 1年半ぐらいです。
植野準太 何故アシスタントを始めようと思われたのですか?
横田卓馬 お金がなくなったからですね。取り敢えず大学を卒業して、
1年間ぐらい東京に出る為のお金を貯めておりました。それで東京に出てきて、
そのお金だけではやっていけないからと生活費を稼ぐ為に、
【ぬらりひょんの孫】のアシスタントをさせて頂いておりました。
前からアシスタントをやって欲しいとは、担当編集者の方に言われていたんですけど、
なかなかやれなくて......
植野準太 なんでアシスタントをされなかったのですか?
横田卓馬 なんででしょう・・・。
たぶん自分のマンガを描けなくなるということを思っていたんだと思います。
植野準太 時間的に、ということですか?
横田卓馬 はい。
植野準太 さっき連載やアシスタントをするようになって、
尊敬の気持ちが強くなったとおっしゃっていましたね。それは忙しいのを目の当たりにした事や
色々あるとは思いますが、何か特に尊敬する気持ちが格段に大きくなったという出来事はございますか?
横田卓馬 それはもう毎週きっちりやっていらっしゃるのを見て、
週刊連載作家全員がやっているのかと思ってすごく尊敬しました。
あと僕の手伝わせて頂いた先生がすごく温厚な人で、全然イライラしたりしないんです。
すごくハードスケジュールなのに、全くテンション変わらず、
いつも同じ状態という感じの人だったので、僕もこんな忙しい中でも落ち着いた感じの
雰囲気を醸し出せるといいなと思いました。
横田卓馬さんの日々のスケジュールについて
横田卓馬 僕は月刊ですし、元の小説があるので、
僕がやるのはネームといってコマわりを考えたり、流れを考えたりするだけなので3日ぐらいです。
植野準太 これも人によるとは思いますが、
今はどの位先のものを描いていらっしゃるんですか?
横田卓馬 1ヶ月先のものです。でも人によって全然ちがうと思います。
すごい先の話を描いてる人もいると思いますし、すごいぎりぎりの人もいると思います。
植野準太 僕は毎週ジャンプを読んでいたのですが、
ストーリーの先を先生方はどこまで考えていらっしゃるのかといつも思いながら読んでいました。
横田卓馬 あぁ、でも本当に1コマ先も考えていないという方もいらっしゃいますしね。
植野準太 すごいですね。
マンガを描く時に一番苦労されていること

植野準太 マンガを描くうえで一番苦労されている事とか、
「こういう時大変だ」と思うことはありますか?
横田卓馬 やっぱりストーリーを考えるところですね。
人それぞれこだわりとかはあるんでしょうけれども、
僕も一応こだわってる部分があるので、そういうところで悩んだりとか。
植野準太 どのようなこだわりか是非お聞かせ下さい。
横田卓馬 自然の流れになるようにこだわっています。
マンガってよく唐突な展開になるじゃないですか。
「え?なんでこんなことになるの?」みたいな。
それがあんまりないようにしたいです。
「あ、なるほどね、こうなるからそうなるよね、わかるわかる」とす~っといくように、
流れるようなストーリーを作りたいというこだわりがあるので、
そこらへんを考えるのに苦労するという感じです。
植野準太 他の小説家の先生から聞いたお話になってしまいますが、
考える時にお風呂に入っていたら思いつくとか、「散歩するに限る」といったような、
自分なりの悩んでる時の解決策はございますか?
横田卓馬 僕は散歩なんですけど、すごく遠くに行く。
全然行ったことのないようなところに。
植野準太 最近だとどの辺に行かれましたか?
横田卓馬 最近は新宿から成城学園前という小田急の駅まで自転車で行ってきました。
植野準太 遠いですね~。よく行かれるんですか?
横田卓馬 最近はたまにしか行かないですけど、
しょっちゅう行ったことない駅に行きたい、行ったことない場所を散歩したいとは思っています。
大学時代に住んでいた場所とか。
植野準太 駅の周りを歩いて、駅の風景を見るという感じですか?
横田卓馬 駅の風景もそうですし、
普通にどういう町かって見て回るだけなんですけど。
植野準太 それは散歩というより、
その新しい場所に行って刺激を得るということが目的なのでしょうか?
横田卓馬 そうですね、たぶん、そういうことなんでしょうね。
最初の投稿
植野準太 一番初めに、自分で作品を描いて投稿するといった
ステップがあると思いますが、その一番初めのきっかけをお伺いしてもよろしいですか?
ジャンプに投稿したのが最初だと思いますが、 それはアシスタントをやっていた頃に先生から言われたのですか?
横田卓馬 いえ、自分から中学三年生ぐらいの時に、
美術部の皆で卒業制作としてマンガを描こうってなって、描いたのは僕だけだったんですけど、
その描いたマンガをジャンプに投稿したのが一番最初です。
植野準太 それ以来その作品はどうなったのでしょうか。
横田卓馬 いえ、なにもその時は音沙汰がなくて...
進展があったのは高校二年生の時に描いた作品です。高校二年生の時にもう一回描いて、
また送ったら何もなくてがっかりしていたんですけれども、その後電話がかかってきました。
その時、「ちょっと今回は落ちてしまったけれど期待してるよ」みたいな感じのことを言われました。
植野準太 それ以降も自分から投稿された作品はありますか?
横田卓馬 はい、それで電話がきまして、
「やったー」と思ってもう一回描いて、電話をくれた人にもう一回送ろうと思ったんです。
でもその人はジャンプから少女マンガに異動になっていました。
そこでリセットされたので、また改めて投稿しました。そして、その時に初めて奨励賞をもらいました。
植野準太 それは高校3年生の時ですか?
横田卓馬 高校3年です。
賞金をもらえるというような事が雑誌に書いてあって、わくわくしました。
そのあと、大学入ってから、大学1年の夏にもう1回描いて送りました。
その時に、今、ジャンプで担当してもらってる方に担当についてもらったんですね。また奨励賞をもらいました。
植野準太 その時点から既に担当者という方がつくんですね。
それは何の担当になるんですか?今後何かを出してきた時の為にですか?
横田卓馬 そうですね、今後はその人宛てに原稿を出して、その人と打ち合わせをして、
「ここが悪いよ、ここが良いよ」みたいなことを言ってもらいます。
本格的にマンガ家への道を歩み始める!
植野準太 その後も、今に至るまでどのようなステップがあったんですか?
横田卓馬 大学一年生の冬にその担当になってくれた方と打ち合わせをして、
また一個作って賞に出しました。ただ、マンガばっかりやってるわけにはいかなくて、
大学の方も色々と忙しくなってきていました。
そんな時、僕は前から暇つぶしにネットでマンガを描いていたんですが、
それがよくわからない人気が出てきちゃいまして、見てる人がすごく多くなっちゃったんです。
そっちもやめるにやめられず、マンガ描く修行にもなるしいいかと思って、
ネットマンガをずっと大学の間中描いておりました。
その時、ジャンプの担当さんから、「次何描く?」という電話をもらったんですけど、
「今ちょっとネットでマンガを描いていて忙しいんで」みたいな感じで、
それで3年間ぐらい保留にしてもらいました。
植野準太 そんなに待ってもらったんですね。
横田卓馬 そうですね、それでネットマンガを3年生の終わりぐらいまで描いてまして、
そのタイミングで担当さんが「描き終わった?じゃあジャンプの方描こうね」
と言ってきてくれたんですけど、
「あの、ちょっと卒業制作があるんでもう一年待ってください」と言って、
一年かけて卒業制作を作りました。
それで、また担当さんから「卒業できた?じゃあマンガ描こうね」
と言われたんですが、
今度は「お金ためないといけないんでバイトします」って言って、
アシスタントではなくてその時は郵便配達のバイトをしました。
郵便配達のバイトで東京に出てくるための生活費を稼ぎながら、
あまりにもジャンプの担当さんをお待たせしているので、
働きながらコツコツ描いたんです。
それで1個作って提出しまして、それで佳作を頂きました。
(注)その作品は、ジャンプのホームページから読めます。
【戦下に咲く】というタイトルの名作です。
横田卓馬 それでようやく賞というものをとれたので、お金も貯まったし、
東京に出ることにしました。働き口も【ぬらりひょんの孫】のアシスタントを紹介してもらいまして、
東京に出て来て今に至ると。
植野準太 サクセスストーリーのはじまりですね
横田卓馬 アシスタントしながらジャンプNEXTという、ジャンプの増刊号みたいな、
新人ばっかり載ってる雑誌があるんですけど、それ用にマンガを描いて載りました。
それでジャンプNEXTに載ったから、
次はジャンプ本誌用にマンガを描きまして、それも一応載りました。
それを描いてる時と同時期ぐらいにヤングマガジンさんからもお誘いがありました。
ダンゲロスのコミカライズのお話を頂きまして、僕も著者の方のファンだったので、お受けしました。
いいかげん連載しないと、ちょっと甲斐性なしと言われてしまうと思っていたので。奥さんに(笑)
ネットマンガについて

植野準太 ネットマンガをやってる時に、
何かしら思ってこれを描き続けようと思っていたとは思いますが、
その原動力みたいなものってなんだったのでしょうか。
横田卓馬 それはもう見てる人が妙に多くなったので、
ほっぽりだすのも責任感なくて嫌だなと思っただけの話です。
ネットではネットでしか描けない表現のマンガがあるので。
だからそこで好きなだけ描いて、一応の区切りをつけて、
そうすれば見てる人にも失礼じゃないだろうしという感じでやっておりました。
植野準太 そこでの経験で活きてきてるものはありますか?
横田卓馬 そうですね、継続的に描き続けること。そういう力がついてきたと思いますし、
単純に毎日のペースで絵もずっと描いていたから、画力もすごく上がったと思います。
植野準太 たしかに。今、ネットマンガを描く前と描いた後の
受賞発表があったジャンプを見せて頂いているのですが、
講評に如実に表れていますね。ネットマンガを描く前の作品の講評には、画力をもっと向上させよう!
と書いてありますが、
ネットマンガ後に描き、佳作をとった「戦下に咲く」では圧倒的な画力と書いてありますね。
それはやはりネットマンガを継続的に書いていたからだと思うのですが、
そのモチベーションはどこからくるのでしょう?
早く描いて欲しいという読者の声がいっぱい来たのですか?
横田卓馬 いやなんか、最初に「毎週20ページを絶対仕上げる!」と
自分で勝手に決めたので、
それをやってた感じです。栄養失調で倒れた時はさすがに休んだけど...
植野準太 自分で決めたこととはいえ、すごいストイックですね…
栄養失調になられたんですか?
横田卓馬 なりました。1回だけ。ずっと描いてて、一人暮らしだったから、
そんなにまともなもの食べていなくて、1日1食の日もありました。睡眠も足りていなかったし。
植野準太 その時から画力が上がったということは、本当に努力の賜物ですね。
今、原稿も見せて頂いているのですが、これは1目瞭然ですね。びっくりしました。
BEFORE!AFTER!みたいな。いや昔の原稿も十分お上手なんですけど…
横田卓馬 さっきネットマンガをやってる場合じゃなかったなと言ったんですけれども、
僕の場合はネットマンガをやったほうが良かったんですね。画力があれだったから。
だから失敗だとは本当は思っていないんですよ。
でも普通の人は、そんなことやってないでジャンプの方に送り続けた方が良いよという話です。
植野準太 チャンスがあったら飛びついた方が良い、ということですね。
たしかに、ストイックな方だったら自分を律せるかもしれませんが、
ひとりで毎週20ページ描くと決めても、実際やるのは大変ですね。。。
横田卓馬 でも編集さんと一緒だったら、
来月の賞のために頑張ろうねって言ってくれる人がいるから、モチベーションがあがると思うんですよ。
画力を向上させていっぱい描く為にも、編集さんとがっちりやっていったほうがいいと思います。
植野準太 画力を上げるというのは、やっぱりネットで色々と指摘されて試行錯誤されたりしたのですか?
横田卓馬 いや、指摘は受けるんですけど、普通に描き続けていれば自然に上がっていくという感じです。
知り合いのマンガ家さんも絵をうまくなるにはどうすればいいですかって聞いたら、
「簡単だよ1日8時間描けばいいんだから」って言われました。もう軽く答えてましたね。
その先生も社会人になって仕事をしながら、1日8時間描いてたって言ってらっしゃたので。
やっぱり量に勝るものはないのかなって。
最後に・・・
植野準太 最後に1つだけお願いがあるんですが、
もしよろしければこのような企画を続けていきたいので、先生を紹介して頂けないでしょうか。
横田卓馬 片桐了先生をぜひ!片桐先生は今サンデースーパーという雑誌で連載をしています。