W3C/IDPF の統合に関して

こんにちは。榊原です。

W3C/IDPF が統合に向けて動く,というニュースが電子書籍の業界でちょいちょい話にあがっています.BPS のお客様は電子書店さまが多いのですが,「EPUBに何かが起きて,ビジネスに影響が出るのではないか?」との声をちょこちょこ聞くようになりました.

ということで,W3C の活動をしている中で,2016 年 5 月現在で分かっている情報について,まとめておきたいと思います.ちょうど CSS F2F ミーティング @ サンフランシスコの帰りの機内で書いています.

EPUB フォーマットの今後のスケジュールについて

2016 年の間は,IDPF の方で EPUB 3.1 の制定を進めます.予定では,2017年 1 月までに,3.1 を出す,としています.だから,最初にドラフトのスケジュールが公開された際,めちゃめちゃ早いスケジュールだったのですね.ただ,当初話が出ていたようなフォーマットになるかは,かなり微妙なようです.日本国内でも後方互換性が無さ過ぎるということで,問題になっていましたし,他の国からも相当数の否定的な意見がやってきていたようです.

IDPF, W3C 合同の会議が 5 月にあったようで,詳しくは参加された方からの報告がそのうち流れるのではないでしょうか?出版や電子取次関係の方が積極的に参加されていたようです.ちなみに,W3C の方には,

IDPF would complete by this calendar year work on EPUB 3.1 which is looking at using more of the OWP and maintaining backward compatibility, and the focus then would be on its next version, dropping requirement for backwards compatibility.

というサマリーが送られてきてきています.AB (Advisory Board) ミーティングのサマリーだったかと思います.EPUB 3.1 に関しては後方互換性を気にしながら作るよ,という部分までは良いのですが,その後のバージョンについては気にせず進める,と書いてあるように読めます.ちょっと直接参加して聞いてみたいところです.

[2016/05/17 追記] DigiCon で話があったみたいですが、2017/1 までに組織の統合にあたっての法律問題の確認や、各組織のメンバからの意見の募集だったりを行うようです。W3C 側にサマリーとして流れてきた情報なので、やはり詳しくは IDPF の DigiCon に参加された方からの情報を得るのが良さそうです。

主となるグループについて

W3C では、DPUB IG (Digital Publishing Interest Group) において、Portable Web Platform (PWP) という,ウェブ的なストリーミングなデータの持ち方と、書籍という一つのファイルに固められたデータの持ち方の両方を取り入れたものを考えている最中です.現段階では,ユースケースの洗い出しを中心に行なっています.もともとこのグループのチェアには IDPF の人が 2 人ほど入っています.

このことから,DPUB IG が中心的な役割を果たすのかと思いきや,これから活動方針に関してグループ内で議論していく模様です.FAQ にもその旨が記述されています.ちなみに,5/23 の深夜に電話会議があり,そこで少し相談することになっている模様です.また,ユースケースの議論に関しては 5/25 に 8h くらい時間をとって議論する,とのこと.

どちらも日本からだと参加するのが難しい時間ではありますが,少しだけも様子を見ておきたいところです.

ビジネス面への影響

少なくとも,数年単位では大きな影響が出ないのではないかと思っています.3.1 については,EPUB の内部的な記述力の向上を目指した変更になっていますが,日本の多くの出版及び書店様が扱われているのが漫画であることから,影響は少なそうです.

文字ものについても,フォーマットの新機能を使わないと出来ないこと,というのはそうそうないので,新しいフォーマットを利用せずに運用する,などのコンセンサスが国内で取れれば良さそうです.

ただし,3.1 の次のバージョンからは,例えばストリーミング対応や,Web との融合するような機能,場合によっては Houdini のような細粒度なレイアウトを可能とする技術,など使うメリットの大きい機能が盛り込まれる可能性が高いと思っているので,次をターゲットに色々動いていくのが良いのではないかと思っています.

3.1 の次のバージョン

3.1 の次のバージョンに関しては,まだユースケースを議論している段階です.ウェブという使われ方と,書籍という使われ方を混ぜようとしているので,フォーマット及びビューア(ブラウザの可能性も)がどんな機能を持つべきか,の洗い出しが完全に終わっていない状態です.

日本では,ここ数年で漫画を中心として EPUB 3 を利用した電子書籍市場が立ち上がって来たとともに,文字もの(除く ライトノベル)についても徐々にどこまで利用できるかを各社が確認し実験的に販売する,などが進んでいるかと思います.

この数年で得ている経験は,かなり基調なので,このまま国際標準に入れてしまえば良いと思っています.すでに問題を解決し実運用してる環境があるかと思うので,それをベースに話をすれば,数年後に後からひっくり返される心配がないのと,すでに投資したシステムも運用しつづけても問題ないことから,お薦めできるかと思っています.

CSS との関係性

これを見ている方は,ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが,BPS ではW3C CSS WG での標準化活動を行なっています.CSS は EPUB フォーマットから参照されている,レイアウトのための言語です.

5/9 – 11 までの F2F ミーティングで何か話が出るかと思いましたが,特に何も話が出ないため,議長にも確認してみたところ,「EPUB に関するタスクフォースまたは何かのグループが組まれるだろうから,その要請がくるまでは特に何も動かないよ」とのことでした.

おわりに

こんなところでしょうか?残念何ら,僕達は IDPF には参加しておらず,W3C CSS WG 及び DPUB IG で得られる情報がメインになっていますが,ある程度予想できる部分も多いので,もし興味のある方はご連絡下さい.

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この記事の著者

榊原 寛

1980 年埼玉県生まれ。BPS COO。慶應義塾志木高校からそのまま慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスへ。コンピュータの勉強がしたかったので、学部1年より徳田英幸研究室へ。無線ネットワークに関する研究、ユビキタスネットワークに関する研究、センサネットワークに関する研究、仮想ネットワークに関する研究等を行い、2010年慶應義塾大学政策・メディア研究科後記博士課程単位取得退学。 IPA 未踏事業 2006年度、2007年度開発責任者。日本学術振興会特別研究員(DC2) 2008年度。技術が実際に役に立つ現場に行きたく、BPSへ。BPSでは、主に電子書籍に関する事業に従事。マンガEPUBビューアや WebKit を利用した EPUB3 の日本語縦書きビューアプロジェクトを推進。全国中小企業団体中央会によるグローバル技術連携・創業支援補助金(創業枠)及び東京都中小企業振興公社「新製品・新技術助成事業 助成金」を MangaReborn 事業にて申請・獲得。電子書籍に関する次なるソリューションについて日々試行錯誤。慶應義塾大学環境情報学部非常勤講師兼任中。慶應義塾大学 SFC 研究所所員。W3C AC Representative。 http://techracho/bpsinc.jp/skk/ , http://www.ht.sfc.keio.ac.jp/~skk/

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