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3年間毎週社内勉強会を継続してきた秘訣(後編)

前回の記事はこちら:3年間毎週社内勉強会を継続してきた秘訣(前編)

morimorihogeです。最近アバターをFSMから社員用イラストに変えました。思ったより世の中の人はスパモン教のことを知らないということで、パスタファリアンには肩身が狭い世の中です。

前回では社内勉強会の企画~実践について書いてきましたのが、後編では開催の継続化と運営側のモチベーション管理について書いていこうと思います。

社内勉強会を継続することの難しさ

社内勉強会は参加者が社内メンバーメインとなることもあり、比較的開催しやすいと思っている方もいるかと思います。
しかし、当日の来場者対応などが手を抜けることは確かですが、継続して続けていくにはやはり難しい点が多々あります。
※1回だけ開催することが目的であれば前編を参照してください

実際に週1回、月1回など継続した社内勉強会開催を目指してみると、多くは以下のような要因で続けられないパターンを経験しているのではないでしょうか。

  • 業務優先パターン:業務でのプロジェクトリリースなどの繁忙期対応により中止が増え、そのまま開催されなくなっていくパターン
  • 決裁者不支持パターン:勉強会推進をしてくれていた上長・役員などがいなくなることで、経営サイドや管理職から開催廃止を言い渡されるパターン
  • 運営者不在パターン:運営の旗振りをしていたメンバーが異動・退職等によりいなくなったり、続けるモチベーションとリソースがなくなることで会の企画自体する人がいなくなるパターン

他にもあるかもしれませんが、僕が耳にしたことのある&経験したことのあるパターンは大抵この3つのどれかに集約される印象です。
それぞれのパターンについて、傾向と対策を考えてみます。

業務優先パターンの傾向と対策

一番多いケースがこれで、業務が忙しいことにより勉強会の準備ができなくなったり、参加者が集まらなくなったりするパターンです。
1回だけ開催するのであれば調整しやすいですが、継続して続けていく中では業務が忙しいときと被ると勉強会よりも業務が優先されてしまうでしょう。

一方で、一度中止された勉強会が再スタートするのは思った以上に労力がかかります。継続開催されているリズムが乱れることで運営側のペースが乱れるということもありますが、それよりも参加予定だった人たちに対する「がっかり」感は無視できません
中止されることが常態化してしまった勉強会は、その後も「中止されるかもしれない」という目で見られるようになるため、参加者が自分の予定を確保してくれにくくなるという状況を生み出し、参加者減る -> 運営側のモチベーション低下の負のサイクルが回り始めてしまいます。

事前予防として考えられることは会自体を縮退して開催に最低限必要なメンバーが集められるようにすることです。
例えば、発表者がいないと会そのものが成り立たないため発表者の確保は必須ですが、参加者は多少少なくなっても開催自体はできるでしょう。
100%理想の勉強会にならなくても開催自体を続けることで次回につなげることができますし、参加人数が少ないほうが突っ込んだ話をしやすいという傾向もあるため、あまり悲観せずに「今回は趣向を変えてやろう」くらいの気持ちでとにかく開催を実現するのが良いと思います。

以下、縮退を考える中でもできる対策を挙げていきます。

対策1:スケジュールを前もって固定する

不定期開催だとスケジュールが読みにくくなってしまうため、プロジェクトのミーティング設定とダブルブッキングしたり忙しくて忘れられたりする確率が高まります。
「毎週w曜日のh時開催」や「毎月第N w曜日のh時開催」など、定期的にいつ開催されるのかを決めてしまい、先にカレンダー&場所を確保してしまうことが一つの対策になります。
また、月次開催なら1週間前、週次開催なら2~3日前にリマインドすることで「忙しいけどがんばれば参加できるかもしれない」層が参加できるきっかけができることも期待できます。

本気でプロジェクトが過渡期な場合はどうしようもないのですが「勉強会入ってるのを忘れてお客さんとの打ち合わせを入れてしまった」「当日まで準備するのを忘れてしまっていた」といったケースもそれなりの割合であるため、こうしたケースは日程の固定化&リマインドである程度対策できるでしょう。
なお、スケジュールに併せて開催場所(会議室の場所)も固定したほうが良いです。開催場所を固定することで「お、また勉強会やってるな」感が高まるため、なんとなく遠巻きに見ていた人がふとしたきっかけで参加してくれるチャンスが増えるでしょう。

対策2:コアメンバーを拡充する

コアメンバーを拡充することで、発表者が参加できなくなった場合にもなんとか開催できるようにする手です。継続的な勉強会開催では最低2名「この人がいれば何かしら開催できる」という人が必須です。
明示的にコアメンバーには入れなくても、いつもの発表者が出られないときにピンチヒッターをやってくれる人であれば普段の開催から目星を付けておくと良いでしょう。

可用性をキープするにはなるべくSPOF(Single Point Of Failure: 単一障害点)を取り除いていくことが大事なので、この辺りはエンジニアであれば理解しやすいところだと思います。

対策3:過去の資産に頼る

発表者・発表準備が間に合わない、というケースの時に使える手の一つです。ある程度議題の幅が広い勉強会であれば過去に他の勉強会で発表した内容を再度話してもらうことも検討しましょう。
同じ発表内容でもどんな参加メンバーの中で話すのかによって反応や刺さるポイントが違いますし、1年前と今では情報に差分が出ているかもしれません。
新人向けの勉強会などであれば1~2年前の内容をもう一度やってもはじめて内容を聴くことになる人は必ずいますし、新人向けでなくても「以前聴いたときには自分のレベルが低くてわからなかったけど、今は内容が理解できるようになった」というケースもあります。

個人的には発表スライドや発表内容は2~3回発表していく中でブラッシュアップされていく部分があると思っているので、これは発表者側にもメリットがある対策だと思いますね。

悪手1:中止して仕切り直す

中止&リスケは極力避けましょう。本当にどうしようもないときは仕方ないですが、中止の次の回は必ず開催するようにしてください
※2回連続で中止すると多くの勉強会は消滅します(参加者も離れていく)

悪手2:無理矢理参加してもらう

業務で忙しい発表者&参加者に無理矢理参加してもらうのは避けましょう。参加者の負担が大きいと次回から参加してくれなくなりますし、業務をないがしろにしてしまうと後述する決裁者不支持パターンのトリガにもなってしまう可能性があります。

どうしても無理なときは潔く諦めて、次回につなぎましょう。

決裁者不支持パターンの傾向と対策

これまで味方してくれていた決裁者がいなくなっていまったり、会社の方針転換などで勉強会開催自体にストップがかかってしまうケースです。

まず大事なのは、前編で書いたような勉強会の味方をしてくれる決裁者が異動してしまったなら、後任者が味方をしてくれそうなのか、説得できそうかを早めに確認しましょう。
異動などで新しい管理職がやってきた場合、前任者の仕事を引き継ぎながら徐々に自分色を出していくかと思いますが、この際に社内勉強会はパッと見会社の利益に貢献しないただのコストに見られやすいです。
前例踏襲主義型の後任者であればなんとかなりますが、そうでない場合には早めに勉強会の意義やメリットを理解してもらい、引き続き後押ししてもらえる状態を維持するようにしましょう。

勉強会が否定される多くの要因は業務以外にエンジニアリソースを割いてしまう点なので、メリット・デメリットを説明しつつ、これまで行ってきた勉強会の履歴と成果もアピールできると良いでしょう。
ゼロから始めるときは前例がないのでそれなりに前向きな決裁者の協力が必要ですが、既に継続しているものであれば害がないことや利点のエビデンスを示すことで、あえて潰そうという後任者に当たらない限りは継続することができるはずです。
中間管理職の人は中間管理職なりの理屈で周囲を納得させなければいけないので、価値観を押し付けるだけではなくてお互いに落とし所を調整していくのが成功の秘訣ですね。

やや辛いケースとして割と聞く耳を持たないタイプの後任者に当たってしまった場合があります。
こうした場合にもいきなり敵対せずに、より上の偉い人に根回しするなどなるべく穏便かつ中止されないような社内政治が求められますが、この辺りは会社ごとにある政治文化に依存してしまうので一概にアドバイスできることはなさそうです。難しい。

#どうしても潰されてしまう!という方、BPS株式会社という会社がありましてですね・・・(露骨な宣伝

運営者不在パターン

旗振り役がいなくなってしまうことで勉強会ごと消滅するパターンです。

旗振り役のモチベーション切れ

このケースは一概に悪い例とは言い切れないと思います。
※ここでは「モチベーション」と書きましたが、「時間が取れなくなった」もその人のやりたいこと優先順位が落ちたことの一種とも言えますので広義には同じカテゴリとして考えます。

勉強会の目的が達成された場合前編でも書いた通り、そもそも勉強会は達成したい目的があってやっているものなので、勉強会以外の方法で目的が達成されたり、旗振り役にとってその目的が重要でなくなったとき、無理に勉強会を続ける必要はなくなります
これはある意味円満な勉強会の終わり方なので、悲観することはないでしょう。また誰かが必要と思ったときに改めて勉強会を企画すれば良いのです。

思ったように運営がうまくいかなかった場合、コアメンバーの醸成に失敗してしまったケースや期待値のミスマッチが原因なことが多いと思います。
コアメンバーが集まりきっていないのに手を広げようとしてしまったり、過大な期待を持って始めてしまったが故に運営の手が回らなかったり、そもそも参加者が思うように集まらなかったりなど様々な「思ったのと違う」になってしまうケースになります。
このケースの場合は旗振り役がもう少し周りを見つつ、まずは少人数でも良しとしたり、頻度や分量を下げたりすることで参加者との期待値ギャップを落とすことが大事かなと思います。周りが自分の思いについてきてくれているのかどうかも見ながら盛り上げていけると良いでしょう。

旗振り役のモチベーションが切れた状態で運営される勉強会は品質が維持できなくなってしまうため、この辺りの改善ができないなら無理矢理継続するよりは円満に終わらせる方法を検討する方が良いかもしれません。
最初から継続を目的にせず、開催回数や期間を決めてやることで精神的ハードルを下げる手もありますので、無理をし過ぎないことも大事ですね。

旗振り役が異動・退職でいなくなってしまった

この場合には、残ったコアメンバーの中から「俺がやる」という人が出るかどうかに委ねられます
運用上は旗振り役の人がこれまでやってきてくれていた各種調整や声掛けなどを引き継ぐことができれば運営できそうに見えますが、自主的に旗振り役をやりたいという人が出ないと継続は難しいでしょう。

既にある程度継続開催されている勉強会であれば、運営そのものはそれまでのコアメンバーや参加者がサポートできるので、旗振り役に必要なのはモチベーションです。周りを巻き込んで行く気概のある人にやってもらいましょう。
※誰かにやってもらう、ではなく自分がやらなきゃ、という気持ちが大事です

それでも社内勉強会を継続する価値は?

そんなわけで、社内勉強会が継続できなくなるパターン別に思うところをまとめてみました。
挙げてみるとわかるように、勉強会継続開催のハードルは高いです。単発開催の勉強会でもそれなりに大変なのに、継続開催となるとそれに加えて考慮することが増えるため、そう簡単に継続させることはできないと思ったほうが良いでしょう。

それでも勉強会を継続していく意義はどの辺にあるのでしょうか?

継続した勉強会開催は社内コミュニティや文化の土台になっていく

継続して勉強会開催することで、直接の業務以外の交流の機会が生まれてきます。
普段同じプロジェクトで仕事をしている人たちは、そのチーム内でノウハウやスキルの共有が行われていると思いますが、社内勉強会ではプロジェクトやチームを横断した形で参加を呼びかけることで、会社全体のノウハウやスキルアップ、お互いに勉強する雰囲気の醸成を行うことができます。

僕はこの「雰囲気」を積み重ねたものがその会社の「文化」になるものだと思っています。こうしたスキルアップ・情報共有に対するポジティブな文化が醸成されていくことで、一人で開発しているのに比べてより多くの技術に触れる機会ができ、成長するチャンスが増えていくでしょう。

※もちろんSlackの技術channelなどで相談するといったことも「雰囲気」の積み重ねの一つです。色々なコミュニケーションの「雰囲気」が積み重なって「文化」になるんじゃないかと思います

成長・キャリア構築の機会になる

勉強会の旗振り役や発表者は確かに大変ですが、それは確実に自分の経験やスキルになりますし、やった結果は経歴として残していくことができます
僕自身、週次定例の勉強会で発表していることは

  • そもそもdeadline driven思考なので定期的になにかやるきっかけになる
  • 発表資料を作っていく中で技術的に自分の理解が深められる
  • 発表する中で、プレゼンスキルが身につく
  • 発表した後の資料を他で使いまわしたり、説明などに流用できる

などなど個人的なメリットもあるから続けているというところが強いです。

もちろん発表が苦手な人というのもいるので無理強いするつもりはありませんが、年に1~2回くらいは身内でも良いので情報を整理して発表する機会を作っておくと、後から振り返ることもできて良いのではないかと思います。

まとめ

そんなわけで、前後編に分けて社内勉強会の企画~継続する方法について書いてみました。
会社によって色々な事情があるとは思いますが、継続的な勉強会を始めてみたいという人の助けになれば幸いです。
最後に社内勉強会で以前発表した勉強会開催に関するスライドから、2枚ほどピックアップして貼っておきます。それでは皆様、良い勉強会ライフを!ラーメン。

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