TPAC 2015 報告前半(榊原バージョン)

BPS 榊原です.

10/25 〜 10/30 @ 札幌 で開催されていた TPAC 2015 に参加してきました.BPS は W3C の会員企業です!

CSS WG や DPUB IG などにおける技術的なブログに関しては,弊社馬場よりアップされるかと思うので,僕の方はマネージ的な立場からの TPAC について備忘録を残しておこうと思います.写真は気が向いたら追加します.

北海道からの機内が暇なので書いたというわけではありません.

TPAC2015 概要

W3C には HTML や CSS,WoT などさまざまな領域における標準化活動を行なっているグループがあり,それぞれのグループが個別に F2F ミーティング (Face to Face/直接のミーティング) や ML での活動を続けています.ただし,全て個別で進めていては,ウェブとしての連携もとれなくなってしまうので,年 1 回,TPAC という名称で全体会議を行なっています.

基調講演などがあったりしますが,実態は,各グループの F2F の集合体です.

BPS は超縦書という EPUB3 ビューア製品を開発しているので,関連するのは,CSS WG,DPUB IG (Digital Publishing Interest Group),Houdini TF (Task Force) あたりです.

昨年の TPAC 2014 @ Santa Clara の時点よりも,CSS や電子出版における技術的な問題がどこなのか,また,その問題を日本からどのように発信するべきなのか,についてのノウハウが溜ってきたので,昨年よりもかなり活発に W3C内において活動することが出来ました.

10/25 (日)Japanese Industry Meetup

本会議は,正確には W3C のミーティングではなく,BPS が主に取りまとめる形で,CSS WG の方々と,日本の出版・ウェブ業界の方々とお話をする機会としてセッティングしました.

Techracho においてご報告していませんが,実は榊原は,前回の CSS F2F ミーティング @ パリ に参加していました.EPUB3 及びウェブにおける縦書きはwriting-modes module という CSS module において仕様定義されているのですが,10 年以上たっても勧告に至っていません.W3C において勧告に至るためには,WG 内で勧告の必要性が認知された時点で,参加メンバたちがアクティブに動き始めます.よって,writing-mode の勧告が必要だ,と騒ぎに行ったわけです.

WG メンバとのご飯会や初めての F2F での発言などを経たところで,うっかり「日本人は英語苦手だし,意見はたくさん持ってるけど WG に来てまで喋るのは無理だよ HA HA HA」*1 と言ったところ,「じゃあ,日本語主体で良いからら,日本内の興味ある人集めて,縦書きに限らず,ウェブにおけるレイアウトの会議を開こうぜ!」と切り返されました.このとき,「OK,俺がやってやんよ」と言うことで,主催することになりました.

*1 僕はあまり喋れないです.こんな気持ちで英単語を並べた,と想像して頂ければと思います.

会場のセッティングやら業界に関係しそうな方へのお声がけをさせて頂き,上記リンクの通りのメンバで実施となりました.CSS WG からは 15 名くらい,日本からは 20 名くらい参加して,会話を進めてみました.

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会議体としては,英語/日本語がわかる Florian が主に会議の内容を WG メンバ側に伝えつつ,基本的に日本語で会議をしてみました.

本来,wiki に書いているような内容の話をしようと思ったのですが,なにげに一つのトピックが長引き,3 時間はあっという間に過ぎてしまいました.Florian からは 1 日会議をしよう!と言われていたのに,3 時間にしてしまったのが,多少悔やまれます.次回は,1 日近く行なってもいいかな?なんて思ったり.

会議の後に,食事会も設定したところ,会議中はあまり発言の機会が得られなかった参加者の方が,積極的に WG メンバと話をしていたのを見て,とりあえず第一段としては,OK かなと安心しています.現在,CSS WG に対しては,F2F を日本でやろうぜ,と話していて,2017 年一発目の F2F は日本でできそうな流れです.それまでに,国内の出版社や組版エンジンを作られている方など,関係する方々に声をかけさて頂きたいな,と思っています.

ちなみに本 Meetup 内では,組版的な要望について BCCKS の田中さんからの意見で話が進み,JLReq に対応する CSS 仕様をどこまで定めれば良いのか,また,ブラウザ側が実装すれば良いのかが分からない,という意見がありました.これについては,日本側から意見が出せればな,と思ってます.

さらにちなみに,可能なら日本からの意見は取りまとめる必要はないな,とも思っています.BPS からの意見,別の出版社様からの意見が,WG において多少ぶつかっても,議論と言うことで周りと考えていけるような状況になれば最高だな,と思ってます.

10/26 (月)

TPAC 初日です.CSS F2F がメインで行なわれつつ,夕方から Developer Meetup というものが開催されていました.

CSS F2F の議論詳細は馬場の記事を参考にしてもらえればと思いますが,Scroll Snap の議論をしている延長で,physical/logical の命名に対し,どのように Scroll Snap が対応するべきか,という議論が活発に行なわれていました.physical/logical 問題は,writing-modes module にも深く関わってくる議論なので,後ほど僕も復習しておこうと思っています.

Developer Meetup では,何件か発表が行なわれていました.

Service Workerという,ブラウザ上で動作する proxy のようなものが発表されていたのですが,なぜウェブ上でこのようなものを再実装するのかなー,というのは実は理解してないです.似たようなもの,他にもたくさんあるんじゃね…など.

Mozilla からは,SFC 時代の同期の工藤君による CHIRIMEN デバイス及びそのソフトウェアアーキテクチャの紹介が行なわれていました.回路設計がオープンソースになっているそうなので,興味のある方は,基盤実装をしてくれる会社に持ち込めば,自分の基盤を作れるんだぜ!とか,IoT/WoT のソフトウェアレイヤリングはこうなるぜ!などの紹介をしていました.

ということで,初日は終了.

10/27 (火)

続 CSS F2F.

どうも札幌コンベンションセンターに設置されているプロジェクタと,Mac 向け RGBmini Display Port 変換器の相性が悪いらしく,議長(Alan) の Macでもろもろ情報が映せません.一緒に見てたら,「もう面倒だから,お前のPC (Thinkpad) で表示しておいてくれない?」ということになってしまい,会議を途中で抜けて内職することが出来なくなりました….

Rounded Display という丸いディスプレイに対する CSS 仕様が韓国 LG さんから提案されています.どうも腕時計を作りたいみたいっすね.彼らが偉いのは,ちゃんと仕様を自分たちで書いて,少しずつ押し進めているところです.英語力は僕達と変わらない感じなので,発表するたびに,ぼっこぼこにされていますが,めげずに持ってきていて,ちゃんと先に進んでいます.

脱線しますが,CSS WG では,チャットシステムとして IRC という太古の時代のツールを使っています.ただし,結構システム化もされていて,議論中にACTION: などと書いて発言すると,bot がその発言を拾い TODO 化してくれます.仕様における issue が解決した時は RESOLVE: とかですね.

Rounded Display に話を戻すと,LG からの担当者はちょいちょい WG メンバからの要求を聞きとれていないらしく,「もう IRC で ACTION 作っておくから後で確認してね」ということで,ものすごい勢いで ACTION を積みまくられたりもしています.でも,ちゃんと ACTION にまでしてくれるのは,優しさな気がするので,もし僕らが何か持っていってぼこぼこにされたとしても,どうにかして伝えようとしてくれそうなので,そこは安心です.

この話をしている最中,どうもディスプレイの形は正円または楕円しかないのか?という議論になりました.「今後星型のディスプレイとかでるかもしれないじゃん!」「いやいや…現実を見てみろよ,そんなのは存在しないだろう?仕様として必要ないYO!」などと話をしているところで,まず,僕の方からたまごっちを IRC 上で紹介してみました.すると,「ほうほう,楕円は可能性があるかもな」となったところで,任天堂の変態ディスプレイが,弊社と今回共同で参加してくれたユニバ株式会社の今野さんから投下されると,場が荒れ始めます.

・匿名希望さん:「ほら,こんなディスプレイがあるんだから,Rounded Display はもっといろんな形に対応した方が良い気がするんだ!」
・ブラウザベンダーG:「俺はこんなディスプレイ向けの実装はしたくない!」

15 〜 20 分はこれだけで議論していて,笑いながら聞いていましたが,僕らとしても,燃料を投下しただけで,現段階で本気で検討して欲しいわけではないので,そっと画面表示を任天堂のディスプレイから,IRC ログに戻したところ,議長(Rossen) から,「おい,さっきのディスプレイに戻してくれ」との指示が.かなり気に入られたようです.

この他にも,現状提案されているスペック一覧を見ながら,メンテされていない仕様を消そう,という提案が出た際は,各仕様の Editor たちがピリっとしはじめていました.

こんな感じで二日目の CSS F2F は終了.(もちろん,他にもたくさんのトピックがありました)


W3C には AC (Advisory Committee) という人が,各組織に一人います.組織を代表する人,という意味です.新たな WG の設立や技術方針について話をする際に,投票権を持っているのです.

現状,BPS の AC は榊原です.が,まだ W3C の中の全てのことにまで手を広げる余裕はないので,あまり興味は持っていません.その AC が一同に会してご飯を食べる,AC dinner が火曜日の夕方に計画されていました.興味もないので,今回一緒に参加しているみんなとご飯を食べに行こうと思っていたところ,W3C/慶應の中村修さんから「えー,行こうぜ」との声がかかり行くことに.ちなみに,中村修さんは学生時代の僕の先生の一人なので,指令に対しては YES または はい しか答えられません.

AC の知合いも少ないので,中村さんにくっついてご飯をゆっくり食べるか,と思っていたところ,村井先生と一緒に移動しつつ,妙に威厳のある人々が多い席にきてしまいました.ERCIM のトップらしい人が目の前に座っています.また,左に大きなおじさんがいるので,聞いてみたところ HTML5 WG のco-chair だと言っています.もちろんご飯の味はあまりしませんでした.

AC dinner はジンギスカン.運営側は,一つの鍋をみんなで箸でつつく,というのがちゃんとワークするのか少し不安だったようですが,特に問題なく,外国の人々はお肉を食べまくっていました.

ご飯の最中にも,ミーティング設定を急きょすることになり走り回ってました.この時,DPUB の Ivan さんという議長?さんと,Willey という会社の女性の方(多分この人も DPUB の偉い人)と挨拶しつつ,DPUB へのスムーズな joinができるようになったので,どうにか良かった気がします.

無事 AC dinner を乗り切った後は,村井先生,中村さん,などなどと別でご飯に….禁則事項が多いようです.

ということで,二日目終了.気を使うことがなにげに多いです.

10/28 (水)

水曜日は Plenary Day.まだ WG や IG になっていないトピックについて話し合うための時間や,会議に参加してくれた人全員に向けた食事会が開催される日です.

(ブログ記事的には)残念ながら,15 時から道内で TPAC とは関係のないミーティングがあったため,榊原は少しだけの参加となりました.

個人的に Houdini という新しい技術が気になっています.こちらは,ブラウザ内で保持されているレイアウトに関する詳細な情報を,Javascript から取得・変更できるようにしよう,という技術です.例えば,現在のブラウザのアーキテクチャでは,フォントはブラウザによって読み込まれ解釈されるだけで,フォントの持つプロポーショナルか等幅か(さらにもっと細かい情報)などの情報をウェブ制作者は取得・利用することはできません.Houdini はこの情報を取得できる API をブラウザに実装しよう,というものです.Google, Apple, MS, Mozilla の主要なブラウザベンダは,皆さん技術者が参加していて,API を決定しようとしています.

この技術があると,現在の CSS では,プロパティが定めたレイアウトでしか,文字などを表現できないですが,微調整をすることが用意になるはずです.ルビの位置の微調整などですね(注:ただし,微調整が出来るようになるまでは,まだかなりの時間がかかると思われるので,もう少し CSS としての仕様化というのは大事なプロセスだと思います.).また,Houdini のような話が進むことで,ブラウザアーキテクチャの見直しにつながれば,とも思っていますが,まだ,僕も分かっていないところが多いので,もう少し勉強したところで書かせて頂きたいと思います.

さて,この Houdini の unofficial 会議が開催されている,ということで,少し遅れて合流しようと,馬場の指定する場所に向かうと,ロビーのような場所に,3, 4 人の人が集まって,一心不乱に作業をしています.良く見てみると,Google と Adobe の人達が,Houdini 向けの仕様ドラフトを書いたり,デモを作ったりしています.ただ,一心不乱過ぎて,会話がめちゃめちゃ早いです.エスパーしても理解できないくらいの速度です.仕方ないので,5 分だけ時間を貰って,どうやれば Houdini 情報をもらえるのか,及び,デモのパッチのありかについての情報を頂きました.欲しい情報を明確に伝えると,にこにこと教えてくれるので嬉しいです.馬場も,パッチをもらえてにこにこしていました(正確には,どこで最新の活動をしているのかが簡単に分かったので,ですね).

残念ながら,ここで僕は退場です.この日は別の作業があったのでした.

木曜日,金曜日の動きについては,また別の記事にさせて頂きたいと思います.

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この記事の著者

榊原 寛

1980 年埼玉県生まれ。BPS COO。慶應義塾志木高校からそのまま慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスへ。コンピュータの勉強がしたかったので、学部1年より徳田英幸研究室へ。無線ネットワークに関する研究、ユビキタスネットワークに関する研究、センサネットワークに関する研究、仮想ネットワークに関する研究等を行い、2010年慶應義塾大学政策・メディア研究科後記博士課程単位取得退学。 IPA 未踏事業 2006年度、2007年度開発責任者。日本学術振興会特別研究員(DC2) 2008年度。技術が実際に役に立つ現場に行きたく、BPSへ。BPSでは、主に電子書籍に関する事業に従事。マンガEPUBビューアや WebKit を利用した EPUB3 の日本語縦書きビューアプロジェクトを推進。全国中小企業団体中央会によるグローバル技術連携・創業支援補助金(創業枠)及び東京都中小企業振興公社「新製品・新技術助成事業 助成金」を MangaReborn 事業にて申請・獲得。電子書籍に関する次なるソリューションについて日々試行錯誤。慶應義塾大学環境情報学部非常勤講師兼任中。慶應義塾大学 SFC 研究所所員。W3C AC Representative。
http://techracho/bpsinc.jp/skk/ , http://www.ht.sfc.keio.ac.jp/~skk/

榊原 寛の書いた記事

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