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オフィスのフレッツ光IPoEプロバイダを乗り換えた

オフィスで使用しているインターネット回線のうち、サブ回線のプロバイダを乗り換えた記録です。
PPPoEの複数回線契約や乗り換えは経験がありましたが、IPoEの乗り換えは初めてなのでいくつか新たな経験ができました。

発端

もともと、フレッツ光ネクストギガラインで1Gbpsの光ファイバーを1本引いていて、その上でメイン・サブ2つのプロバイダを契約し、それぞれPPPoEで接続していました。

メインプロバイダはコロナ初期には致命的なレベルの速度低下があったものの、固定IPをそう簡単に変更できず、サブプロバイダを中心に使うなどだましだまし運用し、最近は落ち着いていました。個人だとネット回線は気軽に変更できるのですが、会社では固定IPを長く使っていることで移行コストが爆増し、ロックインされるのが辛いですね。

そんな中、諸事情でもう1つPPPoEのプロバイダ契約が必要になりました。フレッツ光ネクストではPPPoEセッションは2つまでなので、これ以上追加できません。フレッツ・セッションプラスを契約して3つ目のセッションを張れるようにしても良いのですが、良い機会なので固定IPの移行が容易なサブプロバイダをIPoEのものに切り替え、空いたPPPoE枠を新たな用途に割り当てる方針にしました。

物理回線1本に3つのプロバイダ契約が乗ることになりますが、リモートワーク主体になって出社人数がそこまで多くないこともあり、帯域は足りそうなので工事の手間がない方法を選びました。

ZOOT NATIVEの契約

IPoE用のプロバイダには、インターリンクさんのZOOT NATIVEを選びました。

  • フレッツ回線とのセットではなく単独で契約できる
  • 固定IPに対応している
  • 料金が安い

といった条件に合致するほか、PPPoEでZOOT NEXTを使っており請求がまとめられそうなことが選定ポイントです。

契約は簡単で、ネット上でフレッツのお客様IDとアクセスキーを入れれば、すぐ使えるようになります。PPPoE回線には影響ないので、お手軽です。

フレッツ光IPoEの固定IP1について

フレッツ光 IPoEを使う場合、一般家庭用ではMAP-E(v6プラスなど)やDS-Lite(transixなど)を使いますが、これらは使用できるポート数に大きな制限があり、NAT配下に多数の端末があるとポート数が不足する恐れがあります。また、一部ウェルノウンポートも使いたかったので、今回は固定IPを前提に選定しました。

固定IP1の場合、MAP-EやDS-LiteではなくIPIP方式になります。そのため、ルーターの対応状況には注意が必要です。今回はRTX830を使いました。

初期設定

RTX830では、GUIで「v6プラス固定IP」で設定すればそのまま使えます。ZOOT NATIVEはtransixなのでv6プラス関係ないのですが、どうせIPIPで同じ仕組みなのでそれで通ります。

開通メールに書いてある情報を、適宜記入していく感じでOK。

 この度は「ZOOT NATIVE IPv4固定IP1個サービス」をお申し込み
 いただき誠にありがとうございます。

 以下サービスの登録が完了いたしましたので、設定マニュアルを
 参照のうえご利用いただきますようお願いいたします。

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 ■ご契約サービス情報
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 【ご契約者名】 xxxx
 【メンバーID】 xxxx

 【お客さまID(CAF/COP番号)】 xxxx
 【ユーザー名】 xxxx

 【固定IPトンネル終端装置 IPv6アドレス】 2404:8e00::feed:141
 【インターフェースID】 ::feed (0000:0000:0000:feed)
 【グローバル固定IPv4アドレス】 xxxx

 【アップデートサーバーユーザー名】 xxxx
 【アップデートサーバーパスワード】 xxxx
 【アップデートサーバーURL】 http://update.transix.jp/request

なお、固定IPなのはあくまでIPv4アドレスであり、IPv6アドレスは変動のままです。そのため、何かの拍子にIPv6アドレスが変わったときに素早く繋ぎなおす仕組みが「アップデートサーバー」のようです(たぶん)。GUIで設定すると、更新用のLuaスクリプトも勝手に設定してくれます。うまく設定されたか不安なときは設定例を見ながらコマンドラインで確認します。

ちゃんといい感じの通信ができました。

遅い!

簡単に設定できてよかったよかった、と思っていたら、数日後、とんでもない速度になっていました。

PPPoEのZOOT NEXTを遥かに下回る速度でした。これは想定外。transixの本気がこんなにしょぼいはずがない。しかも確認したら、平日の朝10時ころは連日かなり速度低下が目立ちました(上記スクショは特にひどい時です、なぜ会津若松なのかは謎)。

サポートに問い合わせたところ、いわゆる公平制御が行われているとのこと。確かに公平制御が必要なことは理解できます。みんなが帯域使いまくったらこんなお安い料金で実現できませんし。ただ、いくらなんでも遅すぎるんですよね。

一般社団法人 IPoE評議会が公表している接続サービス契約数のデータによると、2023年3月末時点での契約数とポート数は、各事業者合計で以下のような状況らしいです。

  • IPoE 接続契約総数: 16,148,252 回線
  • 接続ポート総数: 100Gbps 376 ポート (37Tbps相当)

接続ポートの帯域がそのままインターネットで使える帯域というウルトラ雑な仮定に基づけば、1契約あたり 37.6 * 1000 * 1000 / 16148252 = 2.328... (Mbps) ということになります。この計算に意味があるわけではないですが、それでもこの数字未満だとなんとなく気持ち的に「理不尽に速度制限された」と感じてしまいます。感覚的には、ごく瞬間的なピークはともかく、混雑時間帯でも10Mbpsくらいは期待したいところです。

ちなみにINTERLINKさんのサポートの返信は爆速でした。返信じゃなくて通信速度の向上をですね。

新プロバイダへの乗り換え

遅い回線であることがわかったので、乗り換えです。v6プラス固定IP提供ISPのうち、安そうなところから順に公平性制御に関する質問をして、納得感ある回答をいただけた21companyさんにしました。

この会社さん、Webサイトは90年代感が漂いますし、色々なところで「あ、このフォーム裏に人がいるな」といった感触はあるものの、問い合わせへの返答も明確で好印象でした。

移行ダウンタイム

フレッツ光では、IPoEは同時に1契約しかできず、PPPoEのように追加料金で増やすこともできません。仕組み的に仕方ないですよね。

そのため、IPoE回線を乗り換える際には、①既存のIPoE契約を解約 ②新たなIPoE契約を開始 の手順を踏む必要があり、ダウンタイムが生じます。
これについて、いくつかのプロバイダに問い合わせたところ

  • A社) 申し込みの前月までに、旧契約を解約しておいてください。
  • B社) 開通日までに旧契約が解約されていれば開通可能です。開通日は平日であれば指定可能なので、解約日を事前に知らせてください。
  • C社) 開通予約を入れることができます。この場合、旧契約が解約され次第開通となります。

と、対応に差がありました。ダウンタイムを最小にしたい場合、C社のような対応をしてくれるプロバイダを選ぶと良いと思います。今回は正式運用前で切り戻しができたので、2日程度のダウンタイムを許容しました。

設定の変更

transixからv6プラスへの乗り換えですが、IPIPで仕組みは同じなので、アップデートサーバーなど各種設定値が変わるだけです。簡単です。

速い!

ちゃんと人間的な速度が出ました。また、今度は数ヶ月運用していても、時間帯を問わず常に安定した速度が得られています。

終わりに

IPoEプロバイダの乗り換えをしてみました。ダウンタイムはどうしても生じるものの、うまくすれば大きな速度アップもできますし、良いプロバイダとお付き合いできると幸せですね。

最後に、記事執筆中に測定した自宅インターネットのスクショを貼っておきます。



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