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エンジニアのための法律・契約超入門(特定電子メール法編)

こんにちは、shibusoです。今回は弊社CTOのbabaさんが以前主催した社内勉強会の資料から、「エンジニアのための法律・契約超入門(特定電子メール法編)」を再構成して掲載します。

エンジニアのための法律・契約超入門(特定電子メール法編)

そもそもなぜエンジニアが法律や契約を?

フリーランスではなく組織の中でITエンジニアをやっている場合、法律や契約といったものに直面することは多くはないと思います。そのためエンジニア自身も「自分は弁護士ではないし、エンジニアの仕事じゃないよね?」「そういうことにはお客さんが気を付けるべきでしょ?」「たぶん誰かがチェックしているよね?」「契約とかは偉い人の仕事だよね?」という意識でとどまっていることが多いことでしょう。

しかし、まず以下の大原則を確認しておきましょう。

法律はすべての国民に強制される

言うまでもないことですが、21世紀における地球上の陸地は、どの部分であってもほぼ間違いなくどこかの国家に所属しており、これを領土と言います。そしてそこに住む人には、その領土を支配する国家の法律が「強制的に」適用されます。

従って、法律は「知らなかった」では通用しません。次に述べる契約とは異なり、法律にはそれが自分に適用されるかどうかを選択する自由はないのです。

その代わり、国家には法律を順守する者を庇護する義務があります。仮に法律から自由になってしまえば、法による庇護も失ってしまいます。

契約は自由である

世の中のしくみの多くは「契約」によって成り立っています。あなたが会社で働いて給料を受け取っているのも契約に基づいたものです。契約は次のような性質を有しています。

  • 契約を結ぶかどうか、どのような契約を結ぶかは各人の自由です(ここでいう人には「法人」も含まれます)
  • たとえ口約束であっても、法律はこれを正当な契約であるとみなすのが普通です
  • 民法などの一部の法律上の規定は、契約で上書きすることができます

    • ただし法的に無効であるとされる契約を除きます。

法律は国に属する

法律は国ごとに制定されていますので、国が変われば法律も変わります。海外と何らかの形で絡むような仕事のときには注意が必要です。

エンジニアが関わりそうな法律・契約はどのようなものがあるか?

たとえばこんなものがあります。

  • 契約

    • 請負・委任・派遣・出向
    • 見積・注文・納品・検収・請求
  • 著作権法、ライセンス
  • 下請法、派遣法
  • 特商法、特電法、プロバイダ責任制限法、電気通信事業法、PL法、個人情報保護法

今回は特電法に注目します

皆様は特電法(特定電子メールの送信の適正化等に関する法律)をご存じでしょうか。これは2008年に制定されたもので、俗に「迷惑メール防止法」と呼ばれています。

この法律は「広告宣伝メール」を規制します。非営利の団体や個人は対象外です。

重要なのは、この法律には罰則があるということです。

  • 1年以下の懲役または3000万円以下の罰金
  • 委託者・受託者いずれであっても行政命令の対象になる
  • 海外からのメール送信であっても対象となる

この法律では「広告/宣伝メールの送信に同意していない受信者に特定電子メールを送ってはならない」(オプトイン)が義務付けられています。同様に「送信者名表示」も義務付けられています。業者はオプトインの記録も保存しておかなくてはなりません。

オプトイン方式・オプトアウト方式とは

「広告/宣伝メールの送信に同意した相手に対してのみ送信することが可能」なのがオプトイン方式です。それに対してオプトアウト方式とは「メール送信を拒否した者には特定電子メールを送信してはならない」というものです。

日本では以前はオプトアウト方式を採用していましたが、法改正によりオプトイン方式に変更されました。

実運用において

オプトインの義務化はそのままでは不便なので、相手に同意を求めるメールや、名刺交換した相手に送るメールなどは例外扱いとなります。

またオプトアウトでは現実にはスパムメールに対して送信拒否を通知するとかえって自分のメールアドレスが有効であることが悪徳業者に認識されてしまい、逆効果になることが多くあります。

メールに表示すべき項目

「特定電子メール」を送信する場合、以下の項目が盛り込まれている必要があります。

  • 送信者の名前
  • このメールを受信拒否できるという趣旨の文面
  • 受信拒否手続きに使用するメールアドレスまたはURL
  • 販売者の名前(これは特商法に該当する場合に必要です)
  • 送信者の住所・連絡先(これは直接でなくてもリンク先での表示も可能です)

そしてIPアドレス/ドメイン/メールアドレスの詐称も禁止されています。

法律に触れる場合

特にWebアプリケーションを開発していれば、ちょっとした間違いでいつの間にか特電法を侵してしまう可能性に誰しも思い当たることでしょう。以下のような例はすべて違法であり、ちょっとした手違いや思い込みでやらかしてしまう可能性大ですので、注意が必要です。

  • 宣伝メールのフッターに配信停止情報を書き忘れた
  • 新サービスを開始するので、同じWebサイトで運営している別サービスの顧客情報を利用して宣伝メールを一括送信した
  • 利用規約に書いてあるので、広告配信は同意したものと一律にみなした
  • 受信拒否の連絡を受けたのに無視して広告配信を続行した
  • `add_column :users, :is_receive_mm, default: true`

クライアントからこのような違法な指示を受けるということも十分ありえます。その際は特電法に違反するということを説明し、理解してもらう必要があります。

参考資料

特電法については以下のような公の資料がありますので、一度じっくり読んでみることをお勧めいたします。

総務省:特定電子メールの送信の適正化等に関する法律のポイント(pdf)
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/d_syohi/pdf/m_mail_pamphlet.pdf

総務省:特定電子メールの送信等に関するガイドライン(pdf)
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/d_syohi/pdf/m_mail_081114_1.pdf


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