はじめに
皆さまこんにちは。BPS渡辺です。
普段はBPSでこういったお仕事をしております。
背景
今回の弊社のアドベントカレンダーでは、お題として「今の仕事に関連した趣味・勉強をはじめてやった時の思い出」が設定されています。私の場合、創業当初に仲間集めを兼ねて大学の授業をお手伝いしたり、Twitterで面白そうな人に声をかけたり、楽しそうなサイトを運営している人に連絡をとってみたり、仲間集めが楽しかった思い出が沢山あります。それ(仲間集め)と、元々趣味でずっと続けている株式投資を組み合わせて勉強をはじめた、M&A・出資について触れてみます。
資本力も経験ある人材も豊富な会社さんではM&Aなんて日常茶飯事で、もはや当たり前に行っている活動かとは思います。ただ、弊社のような当時25名くらいで受託開発のみを行っていた開発会社がM&A・出資を選択肢に拡大・成長を試みるときにどういった検討・決断をしてきたか?どういった失敗や後悔をしてきたか?あたり、もしかしたら同じ規模以下の会社さんにとって使える情報も多少はあるのではないか?と思い、今回の記事を書いています。
略歴
私のM&A・出資との出会いまでの凄く大まかな歴史は以下です。
- 立ち上げ当初はエンジニア。当時の弊社のエンジニアとは、営業もPMも設計も実装もテストもサーバ構築もマニュアル作成も納品後のケアもするような職種でした。
- 人も増えて徐々に上流よりのお仕事を担当するようになりPMとして動くことが増えました。
- 人が増えたので仕事が足りるようにインバウンドマーケティングを担当しました。
- 仕事の引き合いが増え続けるので採用に注力し(てくれる人に助けてもらい)ました。
- 過去関連記事:20人の会社で20人採用してみるよ。成功や失敗など。
- 仕事の引き合いが増え続けるのでパートナーシップに注力しました。
- 過去関連記事:開発パートナー探しをかねて初九州!
- ずっと一緒に仕事させていただきたい会社に資本提携をお願いしました。
- 過去関連記事:株式会社ウィングドアへの出資のお知らせ
最後のウイングドア社への出資が弊社にとってM&A・出資とも言える初めての活動だったのかと思います。その後、公開できるものも公開できない事例もございますが、弊社は規模の割にはそこそこ沢山の会社さんとのM&Aや出資をへて無事今日まで事業を拡大し続け、多岐に渡る提携を試みてきました。
自社でやってきたこと
自分の足を使ってお相手を探す
1~2年ほどは、M&A仲介に頼らず、自分たちの足で探し回っていた気がします。具体的には以下内容を以下順番で行っていました。
1. 福岡、北海道、大阪にパートナー探しで行ってきました
- 最初のご縁のきっかけがパートナー探しの旅行によるものだったから
- お相手と仲良くするために会いに行きたくなるような場所を選んでみた
2. 何度か、それぞれの地で10~30社と会いました
- 多くても数名で手分けして2~3日で回れるくらいに
- 少なくともその地域の会社共通の雰囲気を知れるくらいに
- 得意分野を聞いてまずはお仕事でご一緒できそうか
3. 相性がよさそうな5~10社とお仕事してみました
- 1回目からうまくいかないケースがある
- 1回目がうまくいっても2回目からいかないケースもある
- 1回目はうまくいかなくても2回目からいくケースもある
- うまくいってもいかなくても、仲良くなるケースもある
- 1回目も2回目もだめで、3回目以降うまくいくケースはなかった
- 絡む社内人員の調整が難しい、社内の信頼担保が難しい
- 1回目ならまだしも、2回目もだめだともはや調整不可能
4. 可能性を探り、タイミングをみて打診してみました
- 3回中2回以上、お仕事でうまくいったところ
- リスペクトと誠意をもって対応する
- 自社にないものを持っているお相手である
- 最終的には金額をつける理屈は必要とはいえ、相手はお金じゃなくて愛情で育てた組織・会社である
- 検討の余地がない状況でも打診してみて関係が崩れたことはない
当時はお仕事で協業してみてとにかく成功率・完遂率が高かったところを中心に提携を打診しました。でも振り返ると、途中多少はゴタゴタしたり、場合によってはプロジェクト自体は大成功といえなかったりしても、歩み寄って絡まった意図を紐解けるお相手が一番いいと感じます。
プロ(仲介)に頼ってお相手を探す
そろそろ自分たちの足で探すのには限界があるかな?誰かに代わりに探してもらうにあたり、自分たちの好みを正確に伝えられるようになってきたかな?と思えたタイミングで実行しました。
1. M&Aマッチングサイトに会員登録する
- 著名大手仲介に連絡してみたところ仲介手数料が最低2000万円と知り中小仲介に焦点を絞ることに
- 中小の仲介と繋がりたくてもコネクションもないし、検索してもリストがでてこない
- 中小の知り合いがなくてもサイトで売り手と仲介に出会えると知る
2. 興味ある売り手案件をもっている仲介と契約する
- 不動産仲介会社と同じでオーナーが情報を掲載していないことが多い
- 不動産仲介会社がオーナーに代わって物件情報を掲載しているのと同じ状況
- 気になる不動産があったとしてもまずはその不動産仲介会社とやりとりするのと同じ状況
- 不動産契約の場合は気に入った不動産をよし契約するぞというタイミングで仲介会社との契約が発生するが、M&Aの場合は先にM&A仲介会社と契約する
3. マッチする仲介を見つける
- 相性
- デューデリジェンス、契約、顔合わせなどの速度感・慎重度合い
- 手数料発生タイミング・手数料率
- 進行方法
- 先にスケジュールを決めてオークションのように買い手が売り手にオファーする機会をつくるやりかた
- 買い手と売り手がそれぞれ情報をだしたりやりとりするペースに合わせて個別に進行させるやりかた
- 需給
- 保有している売り手案件の規模、業種、財務状況は特に中小だと仲介によってまちまち
- 相性微妙だけど自社好みの売り手案件を沢山もっているところはある
よく質問してもらえること
Q1: どういうお相手を探すのが良い?
自社でいろいろ試してみた結果、以下条件に合致するお相手がはじめてのM&Aとしてとりくみやすいと思います。リスクが低く、短期的・中長期的な経営成績向上につながるため。
自社と同じ業種
- 経営したことがある業種・業態だと活用できるノウハウや資産が沢山あります。
- 需要は自社で作り出せるけれど、供給のほうが難しい・追いつかない場合に。
- 開発会社である弊社は、同じ開発会社にM&A・出資してきました。
自社が日常的に外注している業種
- 日常的に外注している内容は自社で扱いやすく主要業務領域とシナジーがあります。
- 自社が需要となりえて、供給を自社運営することで品質や利益率を上げられる場合に。
- PMが不足した場合に外注することが多く、PM主体の開発会社にM&A・出資しました。
競争力を維持するのが難しいが信頼されている領域
- 扱いに困るものの定期的に引き合いがある仕事は確かな需要があり自社に向いています。
- 選択と集中で主ターゲットとして扱うことが難しくても、確かな実力と需要がある場合に。
- 弊社はRuby言語に特化して競争力を高めましたが以前扱っていたPHPでの引き合いも絶えないため、それに特化して競争力を高め続けられる技術力のある開発会社にM&A・出資してきました。また、以前得意としていた「安い・早い」に特化した開発にも対応できるニアショア・オフショアにM&A・出資してきました。
ハード面の初期投資が重い領域
- 人は採用時間を短縮できるかわりに高くなりがち、固定資産類は自社購入するよりも安くなりがち。
- 自社で採用することが可能で、店舗や業務不可欠な設備投資が必要で、集客に時間がかかる場合に。
- 弊社は個別指導塾を開業を自社で始めてしまいましたが引き継ぐご縁を探せばよかったと感じます。
仲がいい人が一杯いるところ
- お仕事の成功は計画できますが、その道のりが楽しいものになるかはやってみないとわかりません。
- 書類上の関係を持つ前から仲良くできているところがある場合に。あるいはそれを試せる場合に。
- 弊社では多くの場合に資本提携前に一緒にお仕事することにしています。
Q2: 探すとき仲介を入れたほうが良い?
自分の足でお相手探ししつつ、仲介にも助けてもらうのが良いです。お相手探しは自分でも頑張らないといけませんよね。
仲介手数料と、手間・時間のトレードオフがある
- 自分の足を使って探す場合は選択肢が限られ、交渉するときも時間がかかります。仲介してもらえると選択肢は広がり、選考、交渉、契約といった協業のスタート地点にたどり着く時間を短縮することができます。
- 仲介手数料が高い・初期費がかかるところほど各工程での対応が手厚く、紹介できる選択肢も豊富にあり、対象企業・事業の規模も大きくなります。
仲介など専門家の間だけの常識が沢山ある
- 売買価格が高いと仲介の実績になり、より大きな成功報酬にも繋がるため、業界特有の価格算出方法やオファー時の儀式があります。
- 前項前提に、太客は必然的に何度も顧客になりうる買い手であり、良い条件を提示できる所謂資本力の高い会社有利になるよう常識が組み立てられています。
- 早く知るために仲介に頼るのはアリだと思います。先に知っておくと、一般的にお相手に喜んでもらいやすい提案例や、コンペ相手がおそらく提案しているであろう内容も推察できるようになります。
Q3: どういう仲介に相談するのが良い?
弊社は結果的に中規模以下(上場しているケースであっても、類似企業の中ではやや小規模または費用抑えめ)な仲介さんに頼ることが多いです。検討事項や利用先や利用条件は以下のようになるかと思います。
M&A方針に合う仲介手数料を設定しているところ
- 大手だと最低報酬2000万円です。交渉開始時に返却不可の100~500万円も必要です。株価合計500万の会社に交渉するために、数百万を支払い、最終的に手数料込みで3000万近くで買う判断は難しいのではと思います。
- 仲介手数料が成功時100~200万のみのところもあります。大抵は小規模な仲介、会計事務所などを専業としていてお手伝いでM&A仲介をしているところなど。意外とお話があるそうなので、自社の顧問会計士さんなどにも相談してみてはいかがでしょうか。
M&Aマッチングサイト
- 最近では沢山のM&A案件を扱うマッチングサイトが沢山あるため雰囲気を知るために利用してみるのも面白いかと思います。
- サイトは比較的小規模な案件が多いのが特徴で基本は無料です。ただし、サイト運営者への支払いに加えて、案件情報を扱っている仲介にも支払いが発生します。
- 私が見ているのは、BATONZ、サクシード、MAfolova、MAクラウドなど。情報更新や調査の手間がかかりますが、その過程で自分の好みの変化に気づくこともあります。
直接交渉したら正確な情報をもらえない場合、直接交渉する手立てがない場合
- 仲良すぎて細かな情報をもらいにくい、合理的な値下げを要求しにくいなど、入ってもらったほうがいいなと感じたケースは多々ありました。
- 交渉してみたいけれども直接連絡しにくい場合もありますよね。まあ仲介手数料がかかってしまうようになるのでその費用との兼ね合いで決めるしかですね。
Q4: 仲介手数料はどうやって抑えられる?
売り手に気に入っていただく
- コンペ先と比べてとても売り手に気に入っていただけた場合、似たようなオファーをしていても仲介が仲介手数料を売り手側にすこし寄せるなど、有利な状況を作ってくれたことがあります。
- 相手が希望している組み方、株式の購入割合、スピード感、得意分野や提携後の計画など、本当に売り手先企業様によって様々だなあと感じます。仲介の手間が少なくなる・なくなるようなオファーができる場合があります。小規模同士であれば細かなデューデリ工程をすっ飛ばすなど。
証券会社経由で仲介を紹介いただく
- 証券会社にはそれぞれ幹事をしている上場M&A仲介屋さんがあり、証券会社経由で紹介いただくことで、いくらか条件が緩和されます。
- 預けている残高や普段落としてる手数料にもよるところでしょうから、ある程度事前準備が必要になります。とりあえず残高は微妙でもよく取引してれば多少効果があるようです。
何度も取引する
- お得意様になれれば多少は抑えてくれるというところですね。最近は競争が激しい会社や規模だとお金に糸目をつけない会社さんも多いと見聞きします。羨ましいですね~。( ̄▽ ̄;)
- ただし、手数料を抑えないと取引が難しい仲介さんと頑張って付き合うより、自社の予算に合う手数料率を設定しているところと複数付き合うほうが出会いの数や成功しやすいように感じます。
Q5: M&A直後から使えるテクとかない?
M&A・出資するとなると、どうしてもお金が先にでていきます。投資分をいつどうやって回収するか?を皆さま気にされます。僕たちもとても気にしてました。お金が全てではありません。でも成功や成長のわかりやすい指標になるんですよね。成功や成長って、買い手側よりもむしろ売り手側のために大事だと感じます。ご縁が正しかったと思っていただけるように。
あえて言われなくても皆さん想像されている内容と同じかとは思います。ただ、私もよく忘れてメモをみて上から順番に実行することもあるので、列挙すること自体は大事ですよね。どなたかの参考になることを祈っています。
コストダウン方面
- オフィス共有
- 労働集約型業務において人件費以外で大きめの固定費を圧縮するなど
- バックオフィス共有
- 非専門職の一部を専門職への転換を検討するなど
- 役員が兼務していることも多くそれの負荷分散させてもらうなど
- 採用や労務や経理などの一般的な業務の合理化など
- 営業人員共有
- 商品や業種が似ている場合など
売上アップ方面
- 人員の組み合わせ
- 開発が強い人材が多い会社とPMが強い人材が多い会社が組んだ。
- より大きな仕事や固い仕事に挑戦できるようになった。
- 人員の稼働最適化
- 開発エースが営業もPMもやってた。
- 人が増えてくれたので開発に専念してもらえるようになった。
- その他、一般的なアップセル、クロスセル
社内ノウハウ共有
- 評価・給与体系
- 就業規則・勤怠
- 技術的知見・勉強会の機会
最後のほうはちょっと疲れてきて雑な感じになっちゃってますが要素としては書ききった気がしています。気になるところありましたらぜひコメント・アドバイスください。よろしくお願いいたします。
最後に
いかがでしたでしょうか?長文でごめんなさい。たまたま訪れたし、著者の渡辺が書いた他の記事や、その渡辺が所属しているBPSという会社についても見てやるか、と思ってくださった方はこちらもどうぞ。